映画『あしたは最高の始まり』は、差別もなく、LGBTも溶け込んだ社会

© 2016 – MARS FILMS – VENDÔME PRODUCTION – POISSON ROUGE PICTURES – TF1 FILMS PRODUCTION – KOROKORO

『あしたは最高のはじまり』

9月9日(土)角川シネマ有楽町、新宿ピカデリー、渋谷シネパレスほか全国ロードショー
配給:KADOKAWA 原題:Demain Tout Commence 2016年 フランス映画
監督:ユーゴ・ジェラン
出演:オマール・シー クレマンス・ポエジー アントワーヌ・ベルトラン グロリア・コルストン

本作は娯楽映画の要素をたっぷり詰め込んだコメディです。面白い材料を惜しみなく次々と繰り出し、ストーリーをサクサクと品よく進める贅沢な作りです。

南仏コートダジュールで独身生活を満喫しているサミュエル(オマール・シー)は、オーナーから借りたヨットに観光客を乗せる仕事をしています。ある日、クリスティン(クレマンス・ポエジー)と名乗る、子育てに自信を失っている女性から「あなたの子よ」と生後3か月の赤ん坊グロリアを託されます。おぼろげに記憶のあるクリスティンを追って、サミュエルはロンドンに向かいますが見失い、そのうえ財布を失くし、言葉も通じないロンドンで、赤ん坊を抱え、立ち往生。そんなサミュエルを救ったのはゲイのベルニ―(アントワーヌ・ベルトラン)でした。サミュエルがクリスティンを追う動きを見ていたTVプロデューサーのベルニ―は、彼をスタントマンにスカウト、広いベルニ―の屋敷に赤ん坊ともども住まわせてくれるのでした。

© 2016 – MARS FILMS – VENDÔME PRODUCTION – POISSON ROUGE PICTURES – TF1 FILMS PRODUCTION – KOROKORO

それから8年、サミュエルはスタントマンとして成功、ベルニ―は成長したグロリアの叔父のような存在です。サミュエルはグロリアから「私のママはどこにいるの」と聞かれ、「お前のママは優秀なエージェントで世界を飛び回っているんだ」と作り話をしていました。ママに会いたいというグロリア。そんな父娘の前に、蒸発していたクリスティンが、恋人を連れて現れます。「暮らしが楽になったからグロリアを返して」。「ママはエージェントじゃなかったんだ」と夢を壊され、父親のサミュエルから引き離されそうになるグロリア。親権を求めて裁判に発展。どうなるグロリア。

本作の魅力は、まず主演に人気絶頂のオマール・シーを得たこと。アフリカ系フランス人のオマール・シーは、笑顔がキュートな『最強のふたり』(11)から、ハリウッド映画の『インフェルノ』(16)では善悪併せ持つキャラクターまで、ミステリー、コメディと幅広い役柄を演じて人気絶頂のスターです。同じ黒人スターのエディ・マーフィの下品なキャラクターと明らかに違う輝きがオマール・シーにはあり、アート系からビッグバジェットの作品までこなせる俳優です。
本作の第二の魅力は、主人公をスタントマンという職業にしたことで、派手なアクションが見られ、ロンドンの観光的面白さも加わっています(しかし名所見学のような要素は一切ありません)。

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第三に、物語は父娘のファミリードラマ、親権裁判、ゲイの友人、さらに難病ものまで加わる賑やかさ。これだけテンコ盛りなのに、観終わってももたれない、淡泊なのです。それは、設定に深入りしていないためで、サミュエルを黒人にしたのも、ベルニ―をゲイにしたのも、ストーリーに活かしていないのです。本来なら人種やLGBTとして差別される側の設定ですが、そういう人たちが地域に溶け込んで違和感なく生活している描き方なのです。
登場人物は善人ばかり。親権争いをするクリスティンも悪意はありません。
監督は、そういう理想的社会の設定にしたかったのでしょうか。

サミュエルは南フランスで暮らしているときは、生活がデタラメで、楽しいけれど刹那的で、真の幸せではありませんでした。ロンドンでグロリアと暮すようになると、義務と責任を負わなければなりませんが、家族、友人と真の幸せを満喫できたのです。
その幸せは持続できるのでしょうか。映画はそこに不治の病いを持ち込むことで幸せを壊そうとしますが、果たして不幸なエンディングになるのか、そこに本作が込めた想いがあるのですが、それは劇場でお確かめください。

映画「あしたは最高のはじまり」
2017年9月9日(土)ROADSHOW 出演:オマール・シー『最強のふたり』/クレマンス・ポエジー/アントワーヌ・ベルトラン/グロリア・コルストン/監督:ユーゴ・ジェラン 原題:Demain Tout Commence
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