映画 ~ 『マイ・ベスト・フレンド』


©2015 S FILMS(MYA) LIMITED

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配給 : ショウゲート
公開表記 : 11 月 18 日(金)、TOHO シネマズ シャンテ他にて全国ロードショー
出演 : トニ・コレット、ドリュー・バリモア、ドミニク・クーパー、パディ・コンシダイン
監督 : キャサリン・ハードウィック
日本版テーマソング : 平原綾香「STAR」(ユニバーサル ミュージック)

ストーリー

親友のミリーとジェスは、幼い頃から人生のすべてを共有してきました。大人になった2人はパートナーに恵まれ、幸せな毎日を送っていましたが、ジェスは子どもに恵まれず、ミリーは乳がんが見つかります。
不妊治療を続けてきたジェスには、待望の子どもができますが、ミリーのことを思うと、子どものことを伝えられない。初めて2人の間に秘密ができてしまいます。手術を終えたミリーは誕生会の晩、周囲の友人に囲まれるもいたたまれず、会場を飛び出してしまう。
ジェスはミリーの乗ったタクシーを追いかけ飛び込むと、400キロ先の「嵐が丘」の舞台であるヨークシャーの荒れ地で2人は久々に楽しい夜を過ごします。「私は何をしていたのだろう」と言うミリーは現実を受け入れます。刻々と死期が迫るミリー、そしてミリーの家族、母親、ジェスの思いは…。

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ミリー役にトニ・コレット、ジェス役にドリュー・バリモア、夫にドミニク・クーパー、パディ・コンシダイン、母親にジャクリーン・ビセット。監督は『トワイライト 初恋』のキャサリン・ハードウィック。脚本のモーウェナ・バンクスは自身が乳がん経験し、「乳がんを患うと家族や友だち、周りの人たちに大きな影響を与えた。そのことを書いてみたかった」と語る脚本で、監督も「人生のすべてが入っている脚本」と惚れこんだ意欲作です。

『マイ・ベスト・フレンド』座談会

座談会には、お仕事と子育てを両立されている千鶴さん、現在産休中のまり子さん、独身OLの里美さんに参加していただき、女性同士の友情などについて語っていただきました。

友情が優先する関係

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司会 : この映画は、監督、脚本、主演とも女性による女性映画です。3人の女性に観ていただいたばかりですが、いかがでしたか。

まり子 : 泣けました。

里美 : みんな泣いていましたよね。でもヒロインが可哀想、という感じはあまり出していませんでしたね。ヒロインの性格でもありますが、日本の病気ものでよくある“つらく苦しい闘病生活”という感じではなく、逆に“病気なんかに負けてたまるか!”という強い精神を描いていましたね。残された子どもたちのことを思うと、ラストは気の毒ではありますが。

千鶴 : 内容の割に重くない。軽いわけではないけれど、泣かせようという作り方をしていないですね。

司会 : この作品は、ミリーとジェスの友だち関係は幼いときから続いています。実際に、女の子の友だち関係はこのように長続きするのでしょうか。

千鶴 : 高校、大学時代の友達とは、結婚してからはそう頻繁に会ったり、連絡を取り合ったりはしていません。繋がってはいるけど、むしろ今、関わりのある職場やママ友といった人たちとの関係に向いてしまいます。

まり子 : 映画のように、ずっと親友で、何でも話し合える関係を持続するのは難しいです。里美  親元から離れて一人暮らしを始めたり、結婚して郷里を離れたりしてしまうと、どうしても疎遠になりがちですよね。

まり子 : そもそも、突然呼び出されたときに仕事はどうしていたのかなど、現実的に考えると色々疑問でしたね。

千鶴 : そうそう。少なくとも日本では仕事中に友達を優先できないですから。その辺りは、日本とは違い自由なのでしょうかね。

司会 : ジェスはいつも笑顔を絶やしませんが、ミリーにはっきりと意見を言いますね。

まり子 : そんなにズバズバ感は感じませんでした。あれくらいなら、仲の良い子でしたら、私でも言うかもしれません。

千鶴 : でも、友達とはいえ、彼氏とか旦那以上に友だち関係を大切にできるかな。

里美 : 世代によって違うのかもしれないけど、友達の方が相手の旦那さんに遠慮する節がありますよね。

まり子 : 究極の友情だよね。旦那でも親でも子どもでもなく、親友を優先して考えている。

千鶴 : ジェスがいざ、子どもを出産するというときに、ミリーに電話をするシーン、あの場面は泣けました。

まり子 : あれは普通、あり得ないですね。

千鶴 : 旦那に一番に連絡して、次が親友というのは珍しいですね。

“切除”に抵抗はあるけれど

千鶴 : 観ていて思ったのは、日本と違って大人と子どもの空間が別々なんですね。日本だったら寝室に子どもがいそうです。

まり子 : 外国は子供部屋に子供を寝かせていますね。

千鶴 : 子どもと大人の部屋が分かれて、プライベートを尊重していることもあるのでしょうね。ママ友の話を聞くと、みんな家族は川の字になって寝ているようです。それでは夜の生活は無理、そんなことを思って観てしまいました。

司会 : ミリー、ジェスの家庭とも円満で、暮らしも裕福ですね。

千鶴 : でも、ジェスの旦那は油田に出稼ぎに行って、終わるまで家に帰れない。

里美 : 暮らしに困っているわけではないけど、裕福というわけではないように思いました。

司会 : ジェスは子どもに恵まれない、ミリーは乳がんになる。恵まれた暮らしをしていても、自分の力でコントロールできない、運命という壁にぶつかります。

まり子 : 天は二物を与えん、ではないけれど、幸せと不幸は共存している。乳がんという現実を受け入れるまでのミリーの行動は共感できます。

千鶴 : 乳がんという、女性ならなるかもしれない事態に、自分を置き換えて観たわけではないのですが、取りたくないけれど、取ることでがんの進行を抑えられるのなら、取ったほうがいいのかな、と思いながら観ていました。

司会 : アンジェリーナ・ジョリーのように、発症する前に取ってしまう人もいます。

千鶴 : お金も掛かってしまうけれど、医学の発達もありますからね。それでも、やはり取ってしまうことに抵抗はありますね。

里美 : テレビで見たのですが、最近では取った後その場で再建するようです。体調にもよるのかもしれませんが。

まり子 : 家族がいたら、生命優先ですよね。

千鶴 : 子宮がんもなりやすいですよね。子どもがほしい場合は切除するかどうか迷うでしょうね。

まり子 : やっぱり定期健診はきちんと受けておいたほうがいいですね。

まり子 : ちょっと引っかかって再検査なんて言われると、本当に心配になります。

司会 : ミリーとジェスはタクシーでヨークシャーに行きますが、あれはどういう意味があるのでしょうか。ヨークシャーが二人の心象風景ということですか。

まり子 : 女の子は、勢いで遠出することはありますよ。

里美 : ましてや、がんで自暴自棄になっているときには、現実から逃げたくなるでしょうし。ただ、単に昔からの憧れの土地に逃避に行ったのか、バーの男に会いに行ったのかは微妙ですね。解釈にもよるかもしれません。

まり子 : ミリーの旦那のキットは、2人の子どもがいたから、奥さんの暴走にも寛容でいられたのでしょうね。

千鶴 : 旦那がミリーにもう少し寄り添っていれば、暴走しなかったかもしれません。

まり子 : 絶望しているときは、ちょっとしたことでスイッチが入ってしまいますからね。

千鶴 : いつも友がそばにいるわけではない。相手の旦那にも気を遣わなければなりませんから、ジェスもある程度、ミリーとは距離を置いているようでした。

J・ビセットへの敬意

司会 : ジャクリーン・ビセット演じる母親が終盤で感動させますね。

まり子 : 70歳くらいのはずだけど、綺麗ですね。

司会 : 彼女は81年に「ベストフレンズ」という女性同士の友情を描いた作品を製作(主演も)しています。監督には、ビセットがお願いして女性映画の巨匠ジョージ・キューカーがメガホンを取っています。そういうJ・ビセットに対するキャサリン・ハードウィック監督の敬意が感じられます。

引き出しのアレはなに?

まり子 : 気になったのですが、引き出しのアレ、可愛くない? 日本ではありえないと思うけど。

里美 : わかんない。面白いですよね。

司会 : アレとは何か、劇場でご確認ください。

司会 : この映画のテーマって、何でしょうか。メッセージを台詞で説明してしまうテレビ的な作り方ではないので、テーマが見えにくいですね。

まり子 : 単なる難病ものではないですね。生活が豊かでも病には勝てないという話に友情を絡めた。

司会 : 脚本のモーティナ・バンクスは、乳がん体験者で、乳がんを抱えたことで、家族や友人との関係がどうなるのか書いてみたかった、それに友情というテーマを加えた、と言っています。

里美 : みんながミリーの直面している問題に向きあっていますね。

千鶴 : ミリーは亡くなるけど、不幸ではない。良い生き方ができたと思う。

まり子 : 家族の愛、親友の愛に包まれていました。

司会 : 夫、子ども、親、友人、そしてミリーも、自己愛ではなく、与える愛ですね。

まり子 : そうですね。それを悲嘆調ではなく、ちょっとユーモラスに描いています。

司会 : 脚本のM・バンクスはコメディアンで、「サタディ・ナイト・ライブ」にも出演している人なので、重くなるのを避けることができたのでしょうね。

絶望の友に光を当てるジェス

司会 : 最後にまとめです。改めて感想をお願いします。

千鶴 : 最初から最後までスピーディに飛ばしている印象を受けましたが、見応えのある作品です。タイトルだけでは内容が分からないし、観てみないと面白さが伝わらない映画ですね。

まり子 : カップルで観るには、男は置いてきぼりになりそう。女の子同士、ママ友で観ると、観終わってからいろいろ話し合えると思う。

千鶴 : だから飽きないですね。

里美 : よくある、母親が乳がんで、家族が取り乱して、という内容ではないですね。この作品はジェスからの視点でミリーの人生を描いているように感じました。暗くない、すっきりとしたラストでした。

千鶴 : 女性の人生テーマが、少しずつ盛り込まれているように思えます。

まり子 : 乳がんになったとき、夫にはこうあってほしい、とか。

千鶴 : 夫の浮気のような話がちょっとあっても、そこはさらっと流していましたね。

里美 : その描写があるからこそ、中盤のミリーの暴走もお互いさまと許せるような気がします。

司会 : ジェスの出産のエピソードで思ったのですが、出産の夫の立会いは日本では遅れていますね。

まり子 : 最近は日本でも増えていますよ。私は旦那には立ち会わなくていい、何もできないから、と言っていますけど、立ち会うと、父親の子どもに対する愛情が違うそうです。

里美 : 産前の両親学級(母親学級)に参加する旦那さんも増えていますよね。そこでいろいろ学んだり、体験したりするみたいです。赤ちゃんのお風呂の入れ方とか。

まり子 : 仕事で帰りが遅くなるご主人は、育児は奥さん任せになります。

千鶴 : イクメンと何もできない旦那と、二極化しているのですね。

里美 : 全体的にミリーに焦点が当たっていて、ジェスが振り回されているようだけど、ミリーによってジェスは助けられている。お互いに絶望感に光を当てる役割をしている。そんな親友関係は理想ですね。

司会 : 本日は様々な感想をお聞かせ頂き、ありがとうございました。

:伊藤 孝

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