映画『チェイサー』は、誘拐されたわが子を救い出す母親の勇気と強さのジェットコースター!

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『チェイサー』

9月23日 ユナイテッドシネマアクアシティお台場ほか全国ロードショー
配給:プレシディオ 原題:KIDNAP
2017年 アメリカ 94分
監督:ルイス・プリエト 製作総指揮:ハル・ベリー
出演:ハル・ベリー リュ―・テンプル

誘拐を題材にした映画は数多い。わが国の作品では、黒澤明の『天国と地獄』(63)、『64(ロクヨン)(16)がすぐに思い浮かぶ。この2本は身代金が絡むが、身代金目的ではない誘拐もある。代表的な作品としては、不倫相手の妻が産んだ赤ん坊をさらい、わが娘として育てる『八日目の蝉』(11)、宝塚市学童誘拐事件の報道規制を扱った読売新聞大阪本社社会部の『誘拐報道』(82)、73年の日本で発生した金大中拉致事件の『KT』(02)、アメリカ映画では、蝶を収集するように女性を拉致した青年を描いた『コレクター』(65)がある。
また、ハル・ベリー主演の『ザ・コール 緊急通報指令室』(13)は、911緊急通報指令室のオペレーターが車のトランクに閉じ込められた少女からの通報を受け、通話を頼りに救出するというもの。プリペイド携帯なので位置が特定できないというシチュエーションとか、犯人を密室に閉じ込めたまま立ち去るラストが話題になった作品である。

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同じくハル・ベリー主演の本作も、身代金目的の誘拐ではない。しかも、母親(ハル・ベリー)の眼の前でわが子が車に拉致されるのだ。その車を追い続ける母親。携帯を落とししまったため、警察に連絡できない。違反を繰り返し、ようやく警官から停止を命じられるが、警官はバックしてきた犯人の車に跳ね飛ばされる。古タイヤを路上に落とす妨害行為により、事故に巻き込まれる車両。犯人は車を停め、引き返すよう命じる。カネなら払うから子どもを返してと訴える母親だが、身代金目的ではないことを知る。交渉しても子供は帰ってこない。母親は犯人の一人を車に引っ張り込み、路上に落とす(落とされたおばちゃんはヒッチハイクで後を追ってくるので、クライマックスで再登場する)。こうして犯人はひとりになる。

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途中、ようやく保安官事務所を発見、立ち寄るが保安官は不在、保安官の戻りを待つが、掲示板に貼られた多数の行方不明の子どもの手配書をみて、警察を頼っても子供は取り戻せないと知った母親は決然と事務所を出る。そして、再び車に乗り込み、追跡を再開する。セリフなしで不安と決断を表現するハル・ベリーの表情演技が素晴らしい。
派手なカーチェイスの後、アジトを突き止めた母親が忍び込む後半はスリラー・タッチになる。母親の主観で描かれるので、ハル・ベリーは全篇出ずっぱりだが、ワンシーンのみアジトに到着したおばちゃんがライフルに弾を込める場面では、唯一ハル・ベリーが画面にいない。このライフルの行方がサスペンスを生む。
そして、ようやく子供を救出すると、隣人だという男が現われる。この男が実は…と、絶えることなく緊張感が持続する。
直線的展開でストーリーの寄り道がない、贅肉をそぎ落とした見事な脚本。犯人は子供をさらってどうするのか。それは想像するしかない。さらった子供はどこかの組織が買い取っているようだ。臓器売買が目的なのだろうか。

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ところで、最初のシーン、ウェイトレスのハル・ベリーの働きぶりが描かれるが、テーブルからテーブルへの動き方、客対応が実に素晴らしい。サービス業がいかに大変かよくわかる。飲食業オーナーは、うちもハル・ベリーがひとり欲しいと思うに違いない。この頭の回転の速さ、瞬発力がこの後の追跡に活かされる。
本作の製作総指揮もハル・ベリー。『007/ダイ・アナザー・デイ』など、美貌やスタイルを強調した作品から、年齢に合わせた母親役の作品にシフトできるのも女優としての才能であろう。必死に犯人の車を追い続ける前半は単調になりがちだが、そこは彼女の表情の変化で緊張感を持続させるのだから見事である。
なお、本作は8月4日に全米で公開され、5週目の『スパイダーマン:ホームカミング』を抜く好発進を切っている話題作である。

映画「チェイサー」
9.23全国ロードショー 命を救う方法は――限界まで《加速》する 奪われた息子を奪還するため、誘拐犯との白熱のカーチェイスを繰り広げるハイスピード・スリラー!
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