ネットに頼らず知識を蓄えて リスクのない夢はない 作家 山崎洋子さん

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横浜を舞台に小説を書いている山崎洋子さん

山崎洋子さんは、1986年に「花園の迷宮」で第32回江戸川乱歩賞を受賞。
その作品は、横浜の遊郭を舞台としたものでした。

――デビュー作で、江戸川乱歩賞(*1)を受賞されたわけですね。

「江戸川乱歩賞は、デビューするための賞、新人の登竜門です。ですから、デビュー作で受賞したというより、受賞してデビューしたということです」。

(*1)江戸川乱歩賞(えどがわらんぽしょう、通称:乱歩賞)は、1954年、江戸川乱歩の寄付を基金として、日本推理作家協会(旧:日本探偵作家クラブ)により、探偵小説を奨励するために制定された文学賞。

横浜が、舞台の推理小説やノンフィクションものを描かれているので、さぞや横浜に精通されていらっしゃる方なのかな、ご出身が横浜なのかなと思っていたら……
「結婚してから横浜に来ましたから、主人以外に、知っている人はおりませんでした。横浜のことも何も知らなかったんです」。

――なぜ、横浜を舞台とした小説を書こうと思ったのでしょうか。

「20代の終わりにシナリオライターになり、アニメーションや、ドキュメンタリーの台本などを書き、生計をたてていましたが、食べていくのが精一杯でした。その後、30代の半ばに一念発起して、江戸川乱歩賞に応募してみたのです。出しては落ち、出しては落ちが3年くらい続きました。
江戸川乱歩賞を応募するにあたり、過去の受賞作を全て読み、使われたことのない題材をと、考えていたときに、ふと主人が言った「横浜にも遊郭があったんだよ」という言葉から、横浜を舞台にした推理小説を書こうと思えたんです。
遊郭といえば、江戸、長崎。……横浜にもあったの? 新鮮な題材です。横浜遊郭のことは全く知りませんでした。昔のことなので、なお更です。

それからが大変でした。今みたいにネットで調べられる時代ではありません。図書館や資料館に足を運び、探しまわっても、横浜の遊郭の資料は見つかりません。

さて、どうしよう……
悩んだ末の逆転の発想。
大胆にも思いついたのは、これだけ資料がなければ、多少間違っていても、誰もわからないんじゃない? ということでした。

遊郭のしきたりについては、他の遊郭の資料を読み、そこから得たものを使う。横浜の歴史は勉強したけれど、他は自分のイマジネーションの世界。大胆ついでに見取り図まで作成してしまいました」。

「それから10年くらい、横浜を舞台にして本を書きました。舞台の脚本から演出依頼まで。横浜のことをほとんど知らないのに」。

――横浜のことを知らなかった山崎さん。
本を書くということから横浜に関わることになり、今では横浜関係の仕事が多くなったそうです。
そんな山崎さんに、横浜の魅力について伺ってみました。

「やみ鍋みたい」。
「私は関西の古い港町で生まれ育ちました。昔ながらの上下関係があり、閉鎖的な雰囲気もあるところでした。
ですから、横浜はなんて開放的なんだろう。昔から出たり入ったりが激しいところでもあるので、よどみがなく、みんな新しく感じる。こちらから入っていけば、受け入れてくれる。
ただ、入っていかなければ、放っておかれる。そういう自由な感じが良いですね。詮索もしないですし」。

――山崎さんがデビューしたころは、女性の推理作家は、少なかったそうですが、女性のあり方、メッセージなどお聞かせください。

「以前は女流作家などと言われ、『女はいいねえ』、『女は特だね』って嫌味を言われ、嫌な思いをした時代でした。
でも今は逆。使いたいときだけ、女性をアピールできる。
平然と女子力を出しても良い時代になったと思います。それでもまだ、この社会は男性社会であり、女性が出て行くのが難しい「ガラスの天井」(女性進出の障壁の象徴)だとは思うのですが、以前から考えると、どれほど恵まれた環境で、どれだけの権利を得ることができているのか、一度振り返ってみてほしいです。

女性の歴史について、もう少し知ってほしいです。
昔の女性が苦労して築き上げてきたものが、今の時代に反映され、その延長線上で、あなたたちがここにいて、色々な権利を手にできているということを知ってほしいです。

全てに関して、100パーセント恵まれている人はいない。どんなに能力があっても、どんなに綺麗な人でも、女性の権利を言われている世の中ですが、その裏では男性の我慢もあります。両者のバランスが必要ですし、大切です。

この恵まれた時代に、リスクをとらずして、何かを得ようと思ってはいけないと思います。
どれだけのリスクを背負い、努力をしてきたか、それを知ってから初めて夢を見てほしいのです。
便利な世の中で、ネット無しでは生きていけないほどですが、ネット社会を信用しすぎるのはよくないと思います。ネット検索に頼らず、もっと本を読んで、勉強して、自分の力で知識を得て欲しいのです。
自分に関係ないと思っている本も、たくさん読んでほしい。それはきっと無駄にはならない、そこからあなたの世界は広がっていくのです。」

山崎 洋子(小説家)

横浜市在住
Web:冬桃宮

取材協力:プチ・フルール レストラン

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