「期待」 ーあべのコラム 第4回

2016.12.3
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「親が期待をしてはいけない」という言葉をよく耳にします。

本当は自分の子どもに期待をしているのに、「あ、いけない」と口に手をやってしまうような保護者が増えています。

けど、期待をしたくなるときには、素直に期待をしていいですよ。それが自然ですしね。子ども本人が何か目標に向かって頑張ろうとしているときには、なおさらです。

お子さんがスポーツの試合やコンテストに向けて「絶対に優勝するぞ」と練習を頑張っているのに「負けてもいいのよ、期待はしてないんだから」などと言っては本人もわけがわかりません。
志望校合格に向けて懸命に受験勉強をしているのに、期待をしないようにと「勉強だけが人生じゃないわよ」と言ってみたり、将来の夢に向かって努力をしているのに、やはり期待をしてはいけないと「仕事なんていくらでもあるわ」などと言っては、かえって「水をさす」だけです。

もちろん、「あえて」そう言ってあげるのなら構いません。余計なプレッシャーやストレスを軽減させるために、あえてそのような言い方をしたほうが良いお子さんもいますからね。「結果が全てじゃないから、思い切ってやればそれでいいわ」とか「合格でも不合格でも、お母さんは今の努力を嬉しく思ってる」とか、そんな言葉をかけてあげたい場面もあります。

しかし、「期待をしてはいけない」と言い聞かせすぎて、思ってもいないことや、よくわからないことを言う必要はありません。
頑張っているお子さんの姿を見て、本当は優勝して欲しいのに違うことを言ったり、合格して欲しいのに違うことを言ったりするのには無理があります。
本人が「優勝したい」「合格したい」と言っているのなら、素直に期待をして「じゃあ頑張って!」で良いのです、それが自然です。

大切なのは「期待をしないこと」ではなく「期待通りにならなかった場合の対応」です。

期待とは違う結果であっても、それをそのまま受け止めてあげることが大切です。

もっと言えば、期待とは違う育ち方をしたり、親としての期待や想定とは違う姿に対しても、それをそのまま愛情を持って受け止めてあげて欲しいと思います。

「優勝したい」という子に対して「優勝して欲しい」と期待をしても大丈夫です、ぜひ応援して頑張らせてあげて下さい。そして残念ながら結果が伴わなかったときは、一緒に落ち込むこともあるでしょう。
しかし、「人生が終わったわけではない」「頑張った努力はウソつかない」「優勝できなくても、あなたが大好きだ」ということを、「期待通りではなかったとき」こそ教えてあげて下さい。

その心の準備さえしておけば、いくら期待をしても構わないと思っています。
負けても、不合格でも、失敗しても、しっかりと受け止めてあげる心の準備をしたら、精一杯の期待をこめて「頑張れ!」と言ってあげて下さい。

あんまり期待もされないのでは、つまらないですからね、大人だって。

コラム執筆者

阿部 伸一(株式会社REO 代表取締役/特定非営利活動法人いばしょづくり 代表理事)

1973年生。神奈川県横浜市在住。心理カウンセラー。
20代後半より、不登校生・保護者へのカウンセリングや学習・進路指導を始める。
『マニュアルは無い』をポリシーとし、特定の手法を用いずに『環境・行 動・資質』それぞれの状況を把握することで、個々に応じた対応や具体的なアドバイスに務めるという独特のスタンス。個別指導塾を運営していることもあり、『不登校からの学校選びと受験対策』『私立一貫校生の不登校対応』は専門分野。
2003年に学習サービス事業の株式会社REOにて「不登校サポートコース」を発足。また、2010年に不登校生、不登校経験者、保護者のサポー トを行う「特定非営利活動法人いばしょづくり」の活動開始。
近著「『不登校』は天才の卵」(宝島社)
web:株式会社REO特定非営利活動法人いばしょづくり
Blog:不登校でもイイじゃん ~あべのブログ~

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