ティエリー・トグルドーの憂鬱 ―100万人が見た圧巻の大ヒット社会派ドラマ―

『ティエリー・トグルドーの憂鬱』 LA LOI DU MARCHE

2015 NORD-OUEST FILMS - ARTE FRANCE CINEMA

2015 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINEMA

配給:熱帯美術館 8月27日ヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開
監督・脚本:ステファノ・ブリゼ
脚本:オリヴィエ・ゴルス
主演:ヴァンサン・ランドン

フランスの失業率は10パーセント近い数字で推移しており、わが国よりかなり深刻な状況です。本作の主人公ティエリーはリストラで1年半も失業状態。役に立たない職業訓練。重機の資格を取得しても現場経験がないからと雇ってもらえません。面接のロープレで、若者から「笑顔がない」「答えがおざなり」などと指摘される始末です。スカイプによる面接。フランスではこれが当たり前なのでしょうか。

ようやく得た仕事はスーパーマーケットの監視員。店内の巡回と監視カメラで万引きをチェックします。肉を万引きした老人は、無一文のために警察に通報するしかありません。監視員は、外部だけでなく内部の監視もしなければならないのです。

勤続20年のパートのレジ係が、お客の捨てたクーポンを収集したという不正行為で店長から解雇されます。しかも店長は人員を補充することなく、人件費の削減の口実として利用するのです。そして今、自分のポイントカードをスキャンしたというだけで解雇されようとしているレジ係の主婦がティエリーの前にいます。「店長に報告するの?」と哀願されるティエリー。部屋を出た彼の取る行動は…。

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映画はここで終わり、観客に判断を委ねるのです。観る側の人生経験が判断を左右するエンディングといえましょう。ティエリーは「失業したことで心が裂けちまった」と話していました。そんなティエリーは、非情な経営側に加担することで、レジ係の同僚の心も裂けてしまうような道を歩ませるのでしょうか。それとも、ようやく得た仕事を失ってでも人間性を取り戻すべきなのでしょうか。

本作はシネスコ画面を使った長廻しが特長です。たとえば、ハローワークの職員とティエリーの2人を画面に収め、会話をワンカットで撮っています。この実験的手法は、銀行員との対話、万引き老人のエピソードでも活かされています。
見応えのある社会派の力作です。



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