妊娠! 仕事は辞める?辞めない?【前編】-女性と仕事、それぞれの選択-


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人の人生は、常に選択の繰り返しです。
特に女性は、仕事、家庭などあらゆる場面において、選択を迫られることが多いのではないでしょうか。

もし、あなたが子どもを授かったら、今の仕事を続けますか? 辞めますか?

今回は、多種多様な職業でご活躍され、出産を機に、実際に様々な選択をされた方々にお集まりいただきました。

プロフィール

奥山 聖子さん
前職:司法書士事務所
小さい事務所だったため、産休・育休の制度自体がなかった。また、一人目の妊娠で色々と不安だったこともあり、退職を選択。現在はRTA指定スクール「のいん」を起業。
また、ベビグラファーとしても活躍されており、今回の座談会の写真は全て奥山さんに撮影していただきました。

清水 真代さん
前職:香港が基盤の客室乗務員
勤務地は香港に在ったが、ご主人は横浜に住んでおり、出産後、家族がバラバラに暮らすことを懸念し、悩んだ結果、退職を選択。
現在は、子育てに専念している。

金好 有香さん
前職:大学病院の看護師
育休制度はあったが、勤務状況が長時間かつ激務で、子育てとの両立が厳しく、退職を選択。現在は、自分にあった働き方ができればいいと考えており、週二回のパートタイムで看護師として働いている。

吉岡 晴美さん
職業:IT企業のSE、営業
三年間とれる育休制度があり、一人目の妊娠の際に育休を取得。育休中に程なく二人目を妊娠。五年半続けて育休を取り、来春約6年弱ぶりに職場復帰予定。

入江 和紗さん
職業:化粧品会社の営業
中小企業のため、育休取得の前例がなく、自ら様々な提案をしながら、社内で初の育休取得中。今後は、お客さん先に直行直帰の在宅勤務かつ時短で働く予定。

大木 麻里子さん
前職:ホテル業とレストランを経営している飲食関係
正社員として勤めていたが、結婚を機に退職を選択。現在は、横浜に引っ越してきて、以前働いていた会社が経営するレストランにアルバイトとして勤務。元々正社員として勤めていたこともあり、会社側の計らいで保険に入り、育休を取得。今後は、昼のみの時短で勤務する予定。

―――清水さんは香港にいらしたのですよね。なぜ香港を選ばれたのですか?

清水さん:内定を頂いた会社が香港に在ったので、そこをベースに客室乗務員として働いていました。
香港は、産休制度が日本と全く違い、取得できる休暇期間が、前後合わせて10週と、ものすごく短いのです。

全員:えー!10週!?

清水さん:10週の中で会社の指定する分け方が3パターン程あり、私は出産前8週、後に2週で取りました。香港は住み込みのお手伝いさんを雇う人が多いので、産休育休の期間が他と比べて短いとしても、大丈夫という認識です。仕事は好きでしたので、一年以上試行錯誤をして、国外ということもあり、退職を選択しました。
ですから、吉岡さんの会社のように、産休育休を三年間とれるというのは羨ましいです。

吉岡さん:産休育休後の時短勤務もあるので、制度がきちんと整っているという点ではありがたいです。でも、三年取得している人は極く少数で、保育園の事情やその後のキャリアのことを考えて、1年前後で復帰される方が多いですね。
私が産休育休を取得する前は、身近に5、6年休んだ人がいなかったので、かなり不安を抱えつつも選んだような形です。

―――勇気のいる選択ですよね。不安も大きいので辞めたいという気持ちもありましたか?

吉岡さん:もともと初めから三年休むと言っていたわけではなく、不安だったこともあり、会社にお願いをして一年ずつ延長して今に至っています。仕事自体は好きですし、会社に対して今まで育ててもらった、また、育児に専念できる貴重な時間をもらえたという恩義もあるので、まずはやってみて、どうしても無理だったら、その時考えようと思い、辞めるということは考えませんでした。

―――金好さんは看護師として働かれているということで、ニーズが高い分、とても大変だったと思うのですが、いかがですか?

金好さん:看護師は、初めに勤めていた病院を辞めてみて分かったのですが、同じ職業でも労働環境が全く異なります。働く場所も病院だけでなく、保育園、施設、訪問などもあります。また病院にしても、クリニックから大きい大学病院まで規模も様々です。
大学を卒業して勤めた大学病院は高度先進医療のところで、独身が多く、若い人がバリバリ働くような環境でした。仕事が好きですし、没頭しますから、残業もそんなに苦にならないような感じでした。

―――現在勤めている病院は、以前勤めていた病院とはまた違った雰囲気の環境ですか?

金好さん:現在勤めているところは、以前より少し規模が小さく、子どもが小学生や中学生、高校生というような、手が離れてきたお母さんたちが多く働いています。みんな家族ありきの仕事なので決まった時間で帰るし、子どもの病欠とかにも、みんな嫌な顔もせず、お互い様だよねという雰囲気があります。家で待っている子どもがいますし、帰らないとごはんは誰が作るの?ということになります。その点はみんな同じ状況なので、しっかり時間で区切って、次の人が残った仕事をやるという分担ができているので、とてもやりやすいです。

―――お互いのことが理解しあえる安心感があるのはいいですね。働き方や場所を変えてよかったと思いますか?

金好さん:自分が独身の頃は、理解しきれなかったですね。仕事をしながら家庭のことまでやらなければいけないことがどんなに大変か、身をもって感じました。今の職場では、中学生や高校生のお子さんを持つお母さんたちは、育児のベテランなので、今こういうことで大変よねって言ってくれたり、子どもが小さいんだから早く帰りなさいって言ってくれる心遣いがありがたいと感じますし安心します。子どもがいてもこういう働き方があるんだなっていうのが分かって、変えてよかったなって思いますね。

―――入江さんは、こういったお話を聞いていかがですか?お化粧品の会社で勤められているとおっしゃっていましたよね。どういったお仕事をされているのですか?

入江さん:話を聞いていて、羨ましいと思いました。仕事がここまでしかできませんでしたと言ったときに、責められるだけだと自分が続けられるのか不安ですね。周りにどれだけ気持ちを分かってくれる人がいるかは大切ですよね。
私が勤めているところはメーカーなんですけど、百貨店とかで取り扱っているようなものではなくて、美容室メインの専売品。美容ディーラーさんに卸して、ディーラーさんと一緒にサロンを回っていく営業スタイルです。小売りではない分、一回の金額も大きいです。
全国エリアなので行動範囲も広く、妊娠する前は、大阪から九州を担当していたので、月の3分の2以上は家にいないような生活スタイルでした。
復帰後は都内、静岡や群馬ぐらいまでの範囲を担当して、直行直帰で、会社への出勤は週一でいいという話になっています。

―――静岡や群馬だと、子どもがお熱を出してもすぐに戻ってくるというのは難しいですね。

入江さん:そうそう!認可保育園に出願しているんですけど待機していて、今年はもうあきらめている状態です。熱が出た際に預かってくれるところと、その預けるところへの送り迎えということで、病児保育とシッターさんをダブルで登録しておこうと考えています。

―――お金がすごいかかるイメージなんですけど、仕事先が遠い以上仕方ないという感じですか。

入江さん:おそらく働いた分が、すべてそこ(保育代、シッター代)に流れてしまう感じです。色々な所に行って、色々な人に会って話ができるので、仕事はすごく好きなんですけど、悩みますね。

―――大木さんはレストランで働いていらっしゃいますが、いかがですか?

大木さん:フレンチのレストランで働いています。不安もありましたが、話を聞いていて、上には上がいるなと思いました。勤務地は、東京駅のほうなので、帰って来られないことはないです。でも、金好さんのお話を聞いて、自分と同じような状況で、理解してくれる人がいるかと言ったら難しい。唯一、お子さんがいて、同じ既婚者同士としてアドバイスをしてくださったり、アルバイトにも関わらず、保険制度も入れてくださったりと色々と気遣ってくださったマネージャーさんがいたんですけど、私が産休に入ってから退職されてしまいました。

全員:あ~…一番の理解者が…

大木さん:同じスタッフのみんなは、産休育休に入ってからも、家に遊びに来てくれたり、お祝い持ってきてくれたり、レストランの雰囲気とかを教えてくれたりと仲はいいです。大学時代も、大学を卒業してからもずっと飲食関係で働いてきたので、仕事も今の会社も好きなので、続けていきたいとは思っています。

―――みなさん、環境は様々ですね。復帰される方の話を聞いて、香港は無理でも、例えば国内とかで前職に戻ってみたいというお気持ちはありますか?

清水さん:仕事は大好きだったので、年齢が後20歳ほど若かったら考えますね。肉体労働ですし、年齢制限等制約が結構書いてある職種なので。でも、私の周りで、辞めた後に客室乗務員に戻って仕事をしている人はほぼいませんね。

―――では、客室乗務員に戻ることは難しいけど、前職の経験を活かした別の仕事はしてみたいですか?

清水さん:そうですね。子どもが今二歳なので、せめて幼稚園に上がって、延長保育とかが使えるようになったら、その時期をきっかけに何かしたいなとは思います。

―――金好さんは、子どもが大きくなって、手が離れてきたら常勤に戻られるのですか?

金好さん:せっかく資格も取りましたし、戻ろうとは考えているのですが、常勤になると夜勤が入ってきますし、上の子どもの小学校の時間との兼ね合いなど、色々と課題はあります。課題の解決が難しいのであれば、今と同じ働き方でもいいかなとは思います。どちらにせよ、家族の理解があってのことなので家族と相談ですね。主人は、子どもが大きくなったらいいんじゃないとは言ってくれるのですが、年齢も上がってきますし、体力が持つかどうか…。日勤の常勤で探してみようかなとは思っています。

―――お二人とも、働けるような環境さえ整えば、ということですね。休職中のみなさんは、復帰をされる際に一番不安なことは何ですか?

吉岡さん:会社の規模が大きいので、社内とは言え顔も名前も知らない人がとても多く、お客様先の業界も多岐にわたり、自社内での職種も多様です。復帰後に以前と同じ部署への配属が約束されているわけではないので、全く知らない人の中で、全く新しい仕事をするかもしれないという不安もありますし、時短勤務で復帰予定なので、時間制約のある中で、周りの人も自分自身も一定の納得感を得られる仕事ができるのかという不安は大きいです。

入江さん:私は、産休育休取得前も、前例がない分、自分で一からやらなければいけないのが大変でした。社長との距離が近いので、毎日会社に出勤しなくても働けるようなやり方などの提案はできるのですが、提案をしてそれを通すためには、実績を残さなければいけないという重圧もあります。数字や責任も自分にのしかかってきますし、言ったはいいけどできてないとなってしまうと、会社にもいづらくなってしまうと思うので、自分がどこまでできるのか不安ではあります。

大木さん:私はホールを担当していて、キッチンの人はシェフ含め、数人子持ちの男性はいらっしゃいます。でも子供はいるけど、男性と女性だとやはり違いますし、独身の女性が多い職場なので、どこまで理解してもらえるかなというのはありますね。

―――やはり、不安は大きいですよね。どれだけ周りが理解してくれるか、自分がどこまでやれるのか、期待と不安が入り混じっているという感じですね。

【後編】へ続く

プロフィール奥山 聖子さん前職:司法書士事務所小さい事務所だったため、産休・育休の制度自体がなかった。また、一人目の妊娠で色々と不安だったこともあり、退職を選択。現在はRTA指定スクール「のいん」を起業。また、ベビグラファーとしても活躍されており、今...

:Blanchechou編集部

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