台風と共に秋が訪れてまいりました。
今年の台風はとても強い風と、沢山の雨を降らせ、この鹿児島各地にも被害をもたらしました。
今でも車で走る海岸線の家々の屋根にブルーシートが目立ちます。自然の猛威に私たちはなす術もありません。毎日の食卓に上がるお野菜たちにも影響を及ぼします。日々の暮らしは自然との共存をおいて成り立たないのだということが実感されます。
鹿児島へ3年前に移住したひとつの理由。“自然豊かなこの地で育つ実りたちと共に居よう。”それは日々沢山の教えを私にもたらしてくれています。
さて、
今回は油とは?
ということを、まずは日々の暮らしに照らし合わせてお話を進めてみたいと思います。
みなさんは珈琲と聞いてどんなイメージが湧きますか?珈琲豆を挽く香り?でしょうか?
珈琲を入れるのは…
挽き終わった粉を袋に詰めた珈琲にお湯を注ぐところから?
煎った珈琲豆を挽くところから?
緑の生豆から焙煎する方は?どのくらいいらっしゃるでしょうか?
植物の種である珈琲の豆。生の豆を煎ってそれを粉にしてお湯を注ぐ。。
この簡単な工程の中に油にとって大切なことが隠されています。
私はこの鹿児島の地に来て、ある二人の方と出逢い、確信を一層のものにしました。
お一人は、鹿児島の中心地で珈琲店を営む、ジニスカフェのPeriさん。
珈琲豆を焙煎する香り…
種に火を入れる…。その前に大変手間のかかる工程があります。
それがピッキング。
沢山の種たち。虫に食べられた種、かびた種、未成熟の種等を一粒ずつ取りのぞく作業がピッキングです。

腐敗する豆(虫食い、カビ、未成熟)
これを教えてくださったジニスのPeriさんは、元々ブラジルでは歯科医でした。鹿児島大学に留学して、日本の人々が珈琲に対する間違った考えを持っていることに驚いたといいます。
珈琲は悪い食べ物で、飲むとお腹が痛くなったり健康に良くない食べ物であると思われていることでした。
豆を焙煎して挽く、そこに一粒でも虫やカビ、未成熟の豆があると、焙煎後にガスが発生するというのです。“歯科医でしたからクレゾールの作り方を熟知していたので、日本の方々が、クレゾールの様にガスが発生している珈琲豆を挽いて飲んでいる。なんて間違った飲み方と、間違った考え方が広がっているのだろう。僕は日本の人たちに本物の美味しい珈琲を飲んでもらいたい”と。
私自身は、自分で無農薬の生豆を挽いて飲む習慣が20年ほど前からあったのですが、引き立ては美味しいのですが、少しずつ豆を煎って飲むので、本当に時間の余裕のある時にしか珈琲は飲みませんでした。
ましてマクロチックな陰陽五行的に珈琲=身体を冷やすもの。暑い地方で作られた植物。キリマンジョロのように高地でジックリと時間をかけて育った古木の豆など貴重な豆しか身体にはそぐわないと思っていましたので、ジニスさんにこのお話を聞いた時には、目から鱗。
一気にアロマオイルの世界の神髄をジニスさんは教えてくれました。
植物の種には油と、ミネラルがじっくりと詰まっています。成長する上に必要なものがあの小さな種の中に潜んでいるのです。人はその植物の赤ちゃんの命を頂いて、恵み多き暮らしを作っています。その種の状況によっては、虫に食べられているものもあれば、かびているものもあり、未成熟だったり、つまり腐敗していく傾向にある種の命もあるということです。それがクレゾールならぬガスを発生させ、身体にも悪影響を及ぼすことがあるということだったのです。小さな種のミクロな世界をひとつひとつ大切に観察し、種をピッキングして、美味しい珈琲を提供しようというジニスのPeriさんの思いが伝わってきて胸がジーンとしたことを覚えています。
油と水とタンパク質、そしてミネラル。。。そんな当たり前な中学生でもわかる理科の実験。それがこのキッチンファーマシー的、台所は薬剤室の醍醐味です。
では、次回は、この植物の豆に火を入れて油にする、もう一人の鹿児島のスペシャリストをご紹介します。お楽しみに。

焙煎風景
写真は麻緒の焙煎風景。普段は大きな鉄鍋で挽きますが、福岡県浮羽の日月窯さんで焼かれた大きな陶板で煎ってみました。中々良いです。