「紫陽花(アジサイ)の香りに出会える季節です。」 〜飯田みゆきのコラム 第12回

2017.6.29

紫陽花(アジサイ)の季節ですね。普通のアジサイと違って、外側だけ花びらがついている”地味な”アジサイを見かけたことはありませんか?

このアジサイは、額縁みたいに花びらがつているので、名前をガクアジサイ(Hydrangea macrophylla f. normalis)といいます。よく見かけるポンポン型のアジサイは園芸用の改良品種で、こちらの地味なアジサイが日本に自生している原種です。

アジサイの花びらみたいな部分は、植物学的には「萼(ガク)」であり、装飾花と呼ばれます。つまりは”ニセの花”ですね。ホンモノの花は、真ん中部分。よく見ると、小さな花の集まりです。

この真ん中部分、うっすら、香りもするのです。

ガクアジサイという植物は、外側の華やかな”ニセの花”で遠くからでも見えるようにして昆虫を誘い、内側の香りで”ホンモノの花”に昆虫を誘い、受粉してもらう作戦をとっています。真ん中のホンモノの花の部分には、実際に昆虫が来ていることもあります。看板と匂いの両方でお客を呼びこむ屋台みたいですね。

だから、受粉が終わったら、花びら(みたいな)部分はだら~ん、と力を抜いて下を向いてしまいます。もう店じまいですから、力を入れて上を向く必要はありません。

ちなみに、ポンポン型のアジサイには、香りはありません。(だって、全部ニセモノなんだもの。)

さらには、コアジサイ(Hydrangea hirta)という、花びら(みたいな)部分をつけないアジサイの仲間は、とっても良い香りを漂わせます。シャネルの香水に使われているという噂があるくらいの良い香りです。夏の高原では、このコアジサイの香りが充満していることがあります。華やかな看板をもたないので、その分、香りで頑張っているんですね。

この時期、ガクアジサイの香りを嗅ぐたびに、子孫を残すために真剣に生きているアジサイのスピリットを感じます。皆さんも、地味なガクアジサイを見かけたら、ぜひ、香りをチェックしてみてください。一味違うアジサイからのメッセージを受け取れるかもしれません。

コラム執筆者

飯田みゆき(”自分の感覚を取り戻す” 森と魂のセラピスト)
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