「どういう言葉をかけたらいいのか」-あべのコラム 第6回

2017.4.21

子どもに対して「どういう言葉をかけたらいいのか」という、「声かけ」のご相談は多いです。「声かけ」に関する専門家のアドバイスを参考にしながら、その「セリフ」をマスターしようと頑張っているというお母さまもいらっしゃいました。

ボクは「声かけ」のご相談を頂いた際に、まず実践して頂きたいとお伝えするのは「ありがとう」と「ごめんなさい」です。「セリフをマスター」するほどの難しい言葉ではありませんね。
しかし、「声かけ」としては、なかなか実践することが難しい言葉だと思っています。

お母さまが子どもに対して「ありがとう」「ごめんなさい」を「言う」のではなく、「言いなさい」と伝えていたり、促していたりする場面はよく見かけます。「はい、ほら、ここで何て言うんだっけ」とか。
けれど、子どもに対して面と向かって「ありがとう」「ごめんね」と言っている場面は、あまり見かけません。そっぽを向いたままボソッと言ったり、ちょっと投げやりに言ったりする場面はよく見ますけどね、「ああ、はいはい、ありがとありがと」という感じで。照れ隠しなのか、仲良しだからなのか、それとも仲が良くないからなのか、それとも面倒だからなのか。

ボクは「声かけ」を「しつけ」として考えないで欲しいと思っています。
「声かけ」は「しつけ」ではなく、まぎれもない「コミュニケーション」です。子どもをうまく育てるための「声かけ」ではなく、ひとりの人間として子どもと信頼関係を築くための「声かけ」であって欲しいなと。

「声かけ」はその「セリフ」以前に、「誰から言われているのか」という点が子どもにとっては影響が大きいもの。自分の存在を認めてくれていない相手から、何をどんなに「声かけ」されても、なかなか素直には耳に入らないでしょう。

「ありがとう」「ごめんなさい」は、相手の存在を認める意思を示した言葉です。相手が子どもであっても、確実にその存在を認めて、尊重していなければ、出てこない言葉です。逆に言えば、「ありがとう」「ごめんなさい」と面と向かって言ってもらえる事で、子どもは自分の存在あるいは存在価値を強く確認できることでしょう。
まぁ、そんな理屈は抜きにしても、「ありがとう」と言われれば気分は良いですし、「ごめんね」と言われて怒る人もいませんしね。気分が悪くないというだけでも、充分に「声かけ」の意義はあると思います。

だからボクは「ありがとう」「ごめんなさい」という「声かけ」をまずはおすすめしています。
「私はできているから大丈夫」というお母さまもいらっしゃるとは思いますが、実際に意識をして過ごしてみて下さい。「ありがとう」と口にするとき、ちょっと違和感を覚えるようだったら、今まであまり言葉にできていなかったからかもしれませんね。

コラム執筆者

阿部 伸一(株式会社REO 代表取締役/特定非営利活動法人いばしょづくり 代表理事)

1973年生。神奈川県横浜市在住。心理カウンセラー。
20代後半より、不登校生・保護者へのカウンセリングや学習・進路指導を始める。
『マニュアルは無い』をポリシーとし、特定の手法を用いずに『環境・行 動・資質』それぞれの状況を把握することで、個々に応じた対応や具体的なアドバイスに務めるという独特のスタンス。個別指導塾を運営していることもあり、『不登校からの学校選びと受験対策』『私立一貫校生の不登校対応』は専門分野。
2003年に学習サービス事業の株式会社REOにて「不登校サポートコース」を発足。また、2010年に不登校生、不登校経験者、保護者のサポー トを行う「特定非営利活動法人いばしょづくり」の活動開始。
近著「『不登校』は天才の卵」(宝島社)
web:株式会社REO特定非営利活動法人いばしょづくり
Blog:不登校でもイイじゃん ~あべのブログ~

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