乳がんの経験者に聞く 早期治療なら予後も良いし社会復帰も早いです

2018.10.8
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10月1日はピンクリボンデー。ピンクリボン運動とは、乳がんの正しい知識を伝え、早期発見・治療を推進して、多くの方を乳がんから守る啓発運動です。ピンクのリボンのロゴや、建物のライトアップなどでご存知の方もいるかと思います。

今回は、検診を受けて早期で乳がんを発見できたNさんに再びご登場いただき、その後どうされているか、お聞きしたいと思います。

Nさんは自治体から送られてきたがん検診の割引チケットの期限が近かったため、あわてて受診し、そこで乳がんが発見されました。初期の乳がんでしたが、これでもし受診をしていなかったら、すでに初期ではなかったかもしれません。

早く検診を受けていたらと後悔しないために。乳がんは早期発見が大切です。
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乳がんはサブタイプとステージ(進行度)で治療法が決まります

乳がんの治療方法は手術、化学療法、放射線療法等を組み合わせて行われます。

乳がんの治療の基本はまず「手術」です。がん細胞の大きさや広がりによって、全摘するか温存(部分切除)するか判断します。わきの下のリンパ節に転移をしていたらリンパ節郭清をします。

その後、病理検査でがん細胞を詳しく調べ、患者さんにとってどの療法を組み合わせるのが最適か判断します。その際指標となる情報が「サブタイプ」になります。サブタイプとはがん細胞の性質のことです。がん細胞が何をエサとして増殖するか(女性ホルモンのエストロゲンやHER2タンパクが陽性か陰性か)、大人しいタイプか増殖が活発なタイプか等で下記の5つのタイプに分けられます。

  1. ルミナールAタイプ
    ホルモン受容体(エストロゲン):陽性/Her2:陰性/増殖能力:低い
    このタイプはホルモン療法が推奨されます。リンパ節転移が4つ以上だったり悪性度が高い場合は抗がん剤をする場合があります。
  2. ルミナールBタイプ
    ホルモン受容体(エストロゲン):陽性/Her2:陰性/増殖能力:高い
    こちらもホルモン療法をしますが、ルミナールAタイプより増殖能力が高いので、抗がん剤の適用になる場合があります。
  3. ルミナールB Her2(ハーツー)タイプ
    ホルモン受容体(エストロゲン):陽性/Her2:陽性/増殖能力:低い~高い
    ホルモン療法に加え、抗Her2薬の適用になります。抗Her2薬には、抗がん剤を併用します。
  4. Her2タイプ
    ホルモン受容体(エストロゲン):陰性/Her2:陽性
    ホルモン療法の効果は期待できないため、抗Her2薬と抗がん剤の適用になります。
  5. トリプルネガティブ
    ホルモン受容体(エストロゲン):陰性/Her2:陰性
    ホルモン受容体とHer2タンパクが陰性なので、通常は抗がん剤を使用します。

また、乳房を温存した場合、局所再発を予防するため放射線を当てます。当てることで全摘した場合と同じ程度の再発率に抑えることができます。
乳房を全摘した人で希望者は乳房の再建手術をします。
場合によっては手術の前に化学療法をすることもあります。

Nさん:私はルミナールBのHer2タイプでした。すべて陽性です。乳房も温存しましたので、化学療法から放射線、ホルモン療法までフルコースです。長い治療になります。腫瘍の大きさは1.2cmとはじめの見立てより小さかったのですが、リンパ節に1つ転移がありました。そのため、手術前はステージ1でしたが、ステージ2Aにランクアップしてしまいました。リンパに転移していたのは正直ショックでしたが、1つだけだしステージ2Aは比較的初期にあたるので、あまり深くは考えないことにしています……。Her2タンパクが陽性だと予後が悪めとのことですが、ここ数年でよい薬ができ、劇的に治療成績が上がったらしいので、その点ではタイミングは良かったのかと……。

どんな治療をしたの?

Nさん:まず手術をしました。全身麻酔でがんの周辺をとりました。手術前に化学療法を勧められましたが、調べて検討した結果、先に手術をすることにしました。現在は化学療法中です。抗がん剤は途中で薬を変えて合計半年、抗Her2薬は1年投与します。点滴は3週間ごとです。現在は副作用を抑える薬があるので、思ったより辛い症状は出ていません。多少は辛いですが……。あと少しで抗がん剤は終わりなのでもう少しの辛抱です。その後ホルモン療法を10年やります。乳房は温存したのでそこに放射線をあてます。

–Nさんは乳房は温存したそうですね。

Nさん:全摘するか温存するか悩みましたが、腫瘍が小さかったので温存することにしました。もともと胸は大きくないので手術後の変形が心配でしたが、意外と変わっていませんでした。うまくいったのではないかと思います。そこは本当に良かったです。

どんな病院がお勧め?

病院は数多くありますが、どんな病院を選べばいいのでしょうか。現在では治療方針は患者自身が選ぶことができますが、標準治療を選択することを前提にご紹介したいと思います。

「標準治療」とは、世界中の研究の成果を集め、有効性と安全性が確認された、現時点での最善の治療とされているものです。患者の状態にあわせて複数の治療法を組み合わせます。基本的に外科手術、化学療法、ホルモン療法、放射線治療がメインになります。

標準治療の詳細はガイドラインで決められているので、普通の病院であればどこでも同じ治療法になります。そのため違いが出るのは医師のがんに対する知識と手術の腕前経験になります。大病院も良いですが、場合によっては若い医師が勉強のため執刀する場合がありますので、確認が必要です。通常の外科より乳腺外科のある病院のほうがいいでしょう。

Nさん:私が手術をしたのは総合病院ですが、そこまで規模は大きくなかったです。形成外科医がいないので乳房の一次再建はできません。また、通常は手術中にセンチネルリンパ節を取って転移をしていないか迅速診断をするのですが、病理医もいないのでできません。ただこれに関しては月に数回近隣の系列の大学病院にバイク便で迅速診断を依頼している日があって、たまたまそれを利用できました。結果的に迅速診断はできましたが、これができていなかったら、化学療法後に再手術になっていた所です。

センチネルリンパ節とは、はじめにがんが転移するリンパ節のことです。ここに転移していなければ、そこから先のリンパ節には転移していないと思われるので、無駄にリンパ節を取る必要がなくなります。転移をしていれば、その周辺のリンパ節を郭清します。昔は乳がんの手術では脇のリンパ節も一緒にごっそり取るのが主流で、術後も後遺症やリンパ浮腫に苦しむ人が多くいました。研究の結果、現在ではそのような方法は取らなくなっています。

–Nさんがその病院に決めたきっかけはなんだったのでしょう。

Nさん:病院の決め手になったのは、家から近いというのもありますが、私と同世代の女性の主治医の先生が疑問にきちんと答えてくれたからです。夫とともに疑問点や気になる所を書きだし質問したのですが、時間をかけて答えてくれました。時間が足らず、翌日にまた予約を取って話を聞いてくれました。2時間くらい話したでしょうか。治療方針について先走る所はありましたが、この先生ならいいだろうと思ったからです。あとは規模は小さめの病院でも乳腺外科医が二人もいたことが大きかったです。調べると、意外と普通の病院に乳腺外科医はいないんですよ。

まとめると、

  1. 豊富な知識と経験をもつ乳腺専門の医師がいる
  2. 患者の意見を尊重してくれる
  3. 検査結果をきちんと見せて説明してくれる
  4. セカンドオピニオンを嫌がらない
  5. 看護師や事務スタッフの対応が良い
  6. センチネルリンパ節の迅速診断ができる
  7. 乳房の同時再建ができる
  8. 同じ病院で化学療法ができる
  9. 同じ病院で放射線治療ができる
  10. 交通の便が良い

このあたりを自分の希望と照らし合わせて決めるのが良いかと思います。1~6あたりまでは重要ですね。

ネットの情報はほどほどに

現在はネットに情報があふれています。専門家の話、経験者の話だけではありません。正しい情報とそうでない情報を自分で見きわめなければなりません。悩む人にとっては見ることで辛くなる情報もあります。

Nさん:ネットで調べまくりましたが、基本的に医師の話と実際に経験した方の情報以外は見ないようにしました。人により意見が違うので。たくさん情報がありすぎて、見すぎるとどれが正しいのか分からなくなりそうです。ただ、ある程度の知識は持っておかないと医師に質問したり治療方針を決めることもできないので、調べるのは大事だと思いました。本も何冊か買いました。基礎知識的なものと、大勢の乳がん体験者のアンケート的な本です。こちらは実際の患者さんの話が載っているので参考になりました。

治療しながら仕事もできます

実はNさんは現在抗がん剤治療中ですが、お仕事もしています。

Nさん:会社が理解があったので、入院中や自宅療養中はお休みをいただきましたが、それ以外は出勤しています。抗がん剤の副作用もそんなに強くなかったというのもあります。副作用で白血球数が減少するので感染症が起こしやすくなります。マスクやうがい、手洗いを徹底しています。気を付けていても時々風邪っぽくなったり、膀胱炎ぽくなってしまったりすることもあるので、気になる症状がでたらすぐに病院に電話して対処法をききます。夫はこんな状態で仕事をすることについてあまり賛成していないようですが。看護師さんに聞くと、皆さん意外と仕事はしているそうですよ。治療でお金が必要ですし、働くことで気分転換にもなりますしね。環境が許すなら仕事を辞めるのはもったいないと思います。

–病名は公表しているのですか?

Nさん:病名は上司にのみ伝えてあります。はじめは言わずに済まそうかと思いましたが、言った方が休みやすいので。それ以外の人達には何かの病気療養中ということにしてあります。皆さん病名についてはそんなに詮索してこなかったので、助かりました。そんな感じで仕事をしています。多分ウィッグもばれていないはずです……。

–ウィッグをつけて仕事を?

Nさん:髪の毛は抗がん剤投与後1か月くらいでほぼ抜け落ちました。ほとんどの人が脱毛します。事前に以前と同じ髪型のウィッグを用意しておきました。サロンで割とお高いのを購入したせいか、ぱっと見カツラだとは気づかないと思います。自毛からウィッグへの切り替えが上手くいくか心配でしたが、しばらく休養してから復帰する際のタイミングでウィッグにしたので多分ばれていないのではないかと。気づいていたとしても「言わない優しさ」でそっとしておいてくれているのだと思います。誰かに「ウィッグ?」って聞かれたら、もうカミングアウトしてしまおうかと思っています。ウィッグもいろいろあるので、気分転換用にネットで安くて可愛いのも買ってみたいです。

Nさん:時々これから先どうなるのか、と考えてしまうこともあります。でも比較的発見が初期でしたし、今現在治療中なのに何年も先のことを悩んでもどうにもならないので、あまり深く考えないようにしています。笑うと体にも精神的にもいいと聞きますし、前向きに頑張りたいと思います。

:Blanchechou編集部

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