新起動の映画『スパイダーマン:ホームカミング』はシリーズ最高傑作!


©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.

『スパイダーマン:ホームカミング』

8月11日(祝・祝)TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
原題:Spider-Man:Homecoming 2017年 アメリカ 133分
監督:ジョン・ワッツ 製作:ケヴィン・ファイギ
出演:トム・ホランド マイケル・キートン ロバート・ダウニー・Jr.
ジョン・ファヴロー ゼンデイヤ マリサ・トメイ
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マーベル・コミックのキャラクター、『スパイダーマン』は1962年にスタン・リーとスティーヴ・ディッコにより創造されました。戦前の1938年に創造されたDCコミックの『スーパーマン』に比べ、まだ誕生して半世紀のキャラクターです。『スパイダーマン』の映画化はサム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の三部作(2002、04、07)と、アンドリュー・ガーフィールド主演のリブート版二部作(12、14)の5本がつくられています。今回は主演に20歳のトム・ホランドを迎えた新起動版で、新しいシリーズの始まりです。

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余談ですが、02年以前に『スパイダーマン』がなんと日本でも映画化されていました。77年に東映がマーベル・コミックとキャラクター使用契約を交わし、テレビドラマシリーズとして78年から79年まで41話が製作されていますが、78年に「東映まんがまつり」の1本として劇場公開されています(ちなみに『スター・ウォーズ』と同じ日に公開されています)。東映版は巨大ロボットにスパイダーマンが乗り込んでエイリアンと闘うスーパー戦隊のような設定でした。なお、マーベルとの契約切れで幻の作品状態になっています。
なお、アメリカではコロンビア映画が77年に『スパイダーマン』のテレビムービーを製作、放映していますが、日本では同年に劇場で公開されています。
さらに余談ですが、マーベル・コミックの権利が、20世紀フォックスでは『X-MEN』、ディズニーでは『アイアンマン』『キャプテン・アメリカ』『マイティ・ソー』『ドクター・ストレンジ』など、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントが『スパイダーマン』と別れているのは、マーベルが権利をバラ売りしたのが原因とされています。各社で大人向け、家族向け、お子様向けと作風が違うのも面白いですね。

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コミックのスパイダーマンには25人の悪役(ヴィラン)がおりますが、映画の本作ではヴァルチャー(禿鷲)という飛行スーツを悪用する怪人が登場、子分に衝撃波、振動波を発射するショッカー、両手から高圧高温を放つエレクトロを従えています。
ヴァルチャーを演じるのがなんと、バットマン、バードマン(飛行してましたね)のマイケル・キートン。悪役ながら家庭を持ち、娘もいるという、憎めない人間的なキャラクターを創り上げています。

ストーリー紹介は、ネタバレ禁止令が出ているため、簡単に留めさせていただきます。
高校生のピーター・パーカーは、アイアンマンに憧れ、アイアンマンのトニー・スタークに認めてもらうため、トニーから渡されたスパイダーマンスーツを着てご近所をパトロール。ご町内の平和と安全を守る日々。そんなポワトリン状態のピーターの前に現われた鳥男ヴァルチャー。翼スーツのダークな迫力。犯罪の動機は受注した仕事をトニー・スタークの会社に奪われたことの復讐。利権争いにしては犯罪スケールが次第に大きくなり、ビルは崩壊するし、フェリーは真二つになるし…。

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マイケル・キートンのヴァルチャーは、悪人ながらも家族を助けてくれたスパイダーマンに対する恩を忘れない優しさも見せます。こういうキャラクター設定がDCコミックとの違いで、「スーパーマン」だと最初から超人で、悪党は世界征服を企むという記号的設定ですが、「スパイダ―マン」は努力してアベンジャーズとして認められようとする高校生と、家庭を大事にするオヤジが、飛行スーツや武器を開発して、仕事を奪われた大企業(トニー・スタークの胡散臭い人物像も掘り下げています)への復讐を遂げようとする中小企業の悲哀すら漂わせたヴァルチャー。しかし強敵ヴァルチャーの行動を阻止しようとするスパイダーマンですが、まだ初心者。見るに見かねて助っ人参上。それは見てのお楽しみ…。

さらに、ピーターの高校生活を描くことで学園青春ドラマの面白さも加わり、学力コンテストやホームカミング(プロムのようなイベント)に参加しようとするピーターが、いつもアクシデントから参加できなくなる繰り返しが楽しく、クラスメイトのネッドがピーターの正体を知って、なにかとピーターに協力するようになるのもバディムービー的要素です。そして、恋人メアリー(ゼンデイア)の父親に会うシーンは『ミート・ザ・ペアレンツ』(00)のようなユーモアと緊張感があります。
監督のジョン・ワッツ(COPCAR/コップ・カー)は、小味の利いたエピソードと、教師やその他大勢的なクラスメイトまで目が行き届いたキャラを創り上げており、これまでの『スパイダーマン』シリーズの中で最高に満足できる作品になっています。

:伊藤 孝

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