成龍映画『スキップ・トレース』はロシア、モンゴル、マカオのアクション珍道中


『スキップ・トレース』

9月1日(金)TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー
配給:KADOKAWA 提供:カルチュア・パブリッシャーズ KADOKAWA
2016年 アメリカ・香港 107分 原題:SKIPTRACE
監督:レニー・ハーリン 出演:ジャッキー・チェン ジョニー・ノックスヴィル
ファン・ビンビン エリック・ツァン
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今年は2本のジャッキー映画が公開されるとは嬉しい限り。6月公開の『レイルロード・タイガー』は集団劇のため、ジャッキーのアクションはあまり見られなかったが、本作はたっぷりのアクションとギャグで大満足。香港、ロシア、モンゴル、マカオを追い、追われの、詐欺師と刑事のバディ・ロードムービー。
ジャッキーのハリウッド・コラボは『ベスト・キッド』(10)以来。今回のバディは『ジャッカス・ザ・ムービー』(02)のジョニー・ノックスヴィル。監督は『ダイ・ハード2』(90)『クリフハンガー』(93)のレニー・ハーリンとは期待が高まる。

香港警察のベニー(ジャッキー)は、香港マフィアの黒幕ヴィクター(ウィンストン・チャオ)を捜査中、同僚のヤン(エリック・ツァン)を失う。ヤンの一人娘サマンサ(ファン・ビンビン)を託されたベニーは彼女の後見人に。そして9年後、マカオのカジノで働くサマンサの前に現われたアメリカ人詐欺師コナー(ジョニー)。カジノから大金をせしめて姿を消す。サマンサを巻き込んだ詐欺に、サマンサの上司は彼女にコナーを探し出すよう命令。困ったサマンサはベニーに相談、ベニーはコナーがロシアに高跳びしたことを知り、ロシアに飛ぶ。なんとかコナーを逮捕するが、実はコナーはロシアン・マフィア、香港マフィアなど数多くの組織から追われていた。そして9年前のヴィクターの犯罪の目撃者でもあった。疫病神コナーのために、雪だるま式にトラブルに巻き込まれてゆくベニー。目的地マカオにたどり着けるか。

ロシアでは、コナーが坂道を転がりながら建設現場にジャンプ。それを追うベニーとロシアン・マフィア。建設設備を使ったアクションの呼吸が素晴らしい。さらに、元WWE、総合格闘家のイヴ・トーレスとジャッキーの、マトリョーショカを使った格闘が面白い。
モンゴルでは泥んこ祭というストーリーに関係ないシーンだが、楽しいエピソードが見られる。本当にこういう祭りがあるのか、気になるところでもある。泥んこ祭ではジャッキー、歌まで披露。そして、モンゴルの中古車販売業者がサイコー。ポンコツのような車が並ぶ路上販売のような店なのに、カード支払いもOK。しかしカードが使えないと分かると、カードを問答無用で鋏を入れてしまう。こういう小味の利いたユーモラスなエピソードを、手を抜くことなく丁寧に挿入してゆくところがジャッキー映画の醍醐味。撮り方によっては陰惨になりかねない物語だが、ジャッキーとジョニーコンビの珍道中が救っており、ジャッキーらしい明るく楽しいコメディ・アクション映画にしている。

マカオに到着すると、アクションとサスペンスのクライマックスになる。まず、証拠であるスマホの指認証をめぐるミステリーに。そしてエリック・ツァンがやはり登場、カッコいい見せ場がある。ラストはエリック・ツァンとファン・ビンビン父娘の感動シーンから一転、ジャッキー映画だから当然のハッピーエンド。あのイヴ・トーレスにまでハッピーなオチが付いている。

女優はファン・ビンビン、シー・シー、イヴ・トーレス、みんな魅力的。ジョニーはジム・キャリーの雰囲気。ジャッキーは「ジョニーはクリス・タッカーとオーウェン・ウィルソンを足したような男」と評している。アクションもできるコメディアンとして、ジャッキーの相棒にふさわしい。裏切りの連続から、やがて友情に変わる経過がよく描き込まれていて、ジョニーは憎めないキャラクターになっている。

本作の構成は、鈴木清順『東京流れ者』(66)のようにミステリアスな香港篇、アクション満載のロシア篇、ユーモラスなモンゴル篇、サスペンスタッチのマカオ篇と、舞台が変わるとタッチも変わるが、違和感のない流れになっている。
本作は、どのアクションもユーモラスだが命がけ。特に筏による川下りシーンでは、ジャッキー本当に死にかけている。
レニー・ハーリンは『カットスロート・アイランド』(95)のような冗漫な作品もあるが、本作はジャッキーが手綱を締めており、ジャッキーの熱い思いを反映した、家族で楽しめる快作である。

ジャッキー・チェン歴代No.1ヒット!『ダイ・ハード2』『クリフハンガー』のレニー・ハーリンとタッグを組んだ新生ジャッキーアクション!!

:伊藤 孝

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