あなたは悪くない! 体と心を守る、女性のための護身(心)術 WEN-DO(ウェンドー)

いざという時、あなたは自分を守る術(すべ)を持っていますか?
自分で自分を大切にできていますか?

女性の様々な生き方を紹介する本コラム、第14回は「リアライズYOKOHAMA」で代表を務める橋本明子さんにお話を伺いました。

橋本さんは、女性のための護身術『WEN-DO』の講師を務め、普及活動を中心に、障がい児・子どもを対象とした性教育プログラム活動、子どもの虐待防止活動などにも取り組まれています。

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WEN-DO(ウェンドー)との出会い

WEN-DOとは WEN=WOMEN(女性)、DO=道(柔道、合気道などの道)、という意味の、女性のための護身術です。1972年にカナダで生まれました。様々な武道の型を取り入れていますが、すべての技を覚える必要はなく、記憶に残った技が、いざという時に使えるという考え方です。

橋本さんは、ワークショップを開催し、これまでに3000人以上の方にWEN-DOを教えています。橋本さんがWEN-DOを知ったのも、たまたま参加したワークショップがきっかけだったといいます。

CAP(※1)という、子どもへの暴力防止活動に2000年から取り組まれている橋本さんですが、対象が子どものため、教えられることにも限りがあります。また、虐待の事実があったとしても、子どもが嫌がったら警察に通報することはできないなど、助けることの難しさに直面し、第三者ができることへの限界を感じていました。

そんな時に出会ったのが、WEN-DOでした。WEN-DOは女性対象ではありますが、嫌だと言える、逃げていいなど、根本的な部分は子どもへの暴力防止活動と同じでした。日本とカナダで行われた養成コースに参加し、資格を取得し、現在に至ります。

障がい児・子どもを対象とした性教育プログラム活動では、体の名称をきちんと知ることで、自分の体を一人で全部洗えるように、また、性的な犯罪の被害者にならないこと、加害者に仕立て上げられないことを目標としています。

なぜ、橋本さんはWEN-DOの普及や、障がい児・子どもを対象とした性教育プログラム活動に取り組まれているのか、そこにはご自身の体験がありました。

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自分が悪いのか、何が正しいのか

橋本さんが11歳の時に母親が再婚。それを境に、義理の父親から性的な虐待を受けるようになりました。
当時、周りへ助けを求めても、「気にしすぎているだけ」「隙を作るからだ」と言われ、誰ひとりとして助けてくれる人はいませんでした。そういった歪んだ環境から、何が正しいのか分からなくなってしまい、時が過ぎていくのをじっと耐えていたそうです。

28歳になったとき、ある雑誌の虐待を取り上げた記事が目に留まりました。 “私と似た話がでている…”と思ったそうです。その後、連載の体験記募集で、橋本さんの体験が掲載されることに。

副題としてついたタイトルは“被虐待児からのメッセージ”―――、
その“”という文字を見て、初めて自分が被害を受けた側の立場であったということに気づきました。

「家の中という外から見えない環境の中で、力のある人が社会的立場を持っていない子どもに対して何かをした場合、子どもである私が黙ってさえいれば、事実はなかったことにされてしまうのです。

抵抗するすべのない子どもに向かう暴力は、大人がすべて悪い。だから、子どもが責任を持たされる必要はないのです。様々な人から虐待した人が悪いのだと言ってもらえ、気持ちが少し楽になりました。

たまに、『(恥ずかしい自身の経験を)よく言えるね。』と言われ、傷つくこともありますが、『そうじゃない、恥ずかしいことをした相手が恥ずかしいんだ!』と、発言していかないと、世間は変わっていかないと思っています。」

男性にのしかかられたときの恐怖、一切身動きが取れなくなるということを幼い時に無理やり経験させられました。
その中でWEN-DOと出会い、ちょっとした技で状況を回避できることを経験、心の中で泣いていた、幼い時の自分がふっと顔をあげたような気がしたそうです。

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経験がないことでもできる―――その勇気を持つ方法

「メディアで虐待が取り上げられ、虐待した親も被虐待児だったと聞くと、まるで虐待を受けていた人が100%同じことを繰り返すかのように聞こえますよね。
でも、実際は繰り返してしまう人のほうが少ないのです。」

なかには、自分が虐待を受けて育ってきただけに、自分が虐待をしないで育てられるのか、自分も虐待してしまうのではと思い、子どもを産むのが怖いと感じてしまう方もいるかと思います。

「大変だったね、苦しかったねと言ってもらい、自分の経験を受け止めてもらう。そうすることで安心でき、自分が虐待を受けて育ったとしても、経験がない(虐待をせずに育てる)ことをやる勇気を持てるようになるのです。」

沢山の人に打ち明けなければならないということではなく、自分にとって居心地のいい人の力を借りながら、少しずつ心にかかっていた抑圧を和らげていくことがとても大切なのだと橋本さんは語っています

あなたは悪くない!

暴力は力関係の中で起きます。
怖くて逃げられない、誰にも言うなと口止めされてしまうこともあると思います。

しかし、そういう時は誰かに“相談”してほしいと橋本さんは言います。

「思い出した時に嫌な気持ちになる秘密は、誰かに相談してください。相談をすることは告げ口ではありません。告げ口は、誰かを困らせるために言うことで、相談は困っていて、誰かの知恵を借りるためにすることです。

被災地の避難所で性被害が多発していたことが、阪神淡路大震災の際に発覚しました。
震災で亡くなった人に比べたら自分は辛くない、弱音なんて吐けない、と考えてしまうそうです。

被害にあうのは隙があるからだ、夜道を歩くから危険な目にあっても仕方ない、『被害を受ける側にも“原因”がある』、と思い込まされているのが世論かと思いますが、そうではありません。加害者が危害を加えることを決めたから、被害にあってしまったのです。最後に、橋本さんは「被害にあう側が責任を感じる必要はないのです。加害者が悪いのです。あなたは悪くない! それを伝えたいのです。」と力強く語りました。

(※1)CAP:Child Assault Prevention(子どもへの暴力防止)。子どもが様々な暴力から自分の心とからだを守る暴力防止のための予防教育プログラム。

著書

「セルフ・ディフェンス」(2004年9月1日 発行)
著者/橋本明子 発行所/三五間

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取材・文:Blanchechou編集部

リアライズYOKOHAMA

WEN-DOの紹介、普及をはじめとする様々な活動を行っています。ワークショップ 開催、参加ご希望の方は下記サイトよりお問合せください。

Web:http://realize-yokohama.jp/

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