美術教員から転職!パン販売へ!?――人生を変えた意外な転換


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横浜周辺に無添加の手作りパンを出張販売する宅配専門のパン販売業・“パンの季”。味と健康にこだわったパンをできるだけ安価で提供するため、お店は構えず、宅配と通販のみで営業しています。材料は、砂糖は甜菜糖、小麦粉はカナダの最高級特等紛、油はトランス脂肪フリーの油とバターのみの使用、こだわりの無添加です。

販売は既存のお客様先をまわりながらも、飛び込み訪問販売や行商のように販売することも多いです。

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女性の様々な生き方を紹介するコラム、第7回はそんな“パンの季”で営業を担当している小林明子さんにお話を伺いました。

元は美術教員だったという小林さん。
いったいなぜパン屋への道を選んだのでしょうか

学級崩壊のクラスを担当――“パンの季”オーナー・渡部さんとの出会い

小林さんは美術教員を1年経験し、“パンの季”の営業へと転職します。
そのきっかけの1つ、いわゆる学級崩壊したクラスを担当したことにありました。

授業を聴く耳を持たない生徒たちを前に、「どうしたら授業を聴いてもらえるのか?」「自分はどうすればいいのか?」悩み苦しむ日々だった時、偶然“パンの季”のオーナー・渡部さんと出会います。
最初はお客としてパンを買っていたそうですが、熱い志と信念を持つ渡部さんと意気投合し、今の働き方や生き方に疑問を持つようになったそうです。パンのことだけではなく、色々な話をするようになり、授業のことでもアドバイスをしてくれたそうです。

そのアドバイスをキッカケに「自分はもっともっと本気になれる」と知ることができました。もっと努力してみようと思い、準備して挑んだ授業。最初はいつも通り誰も聴こうとはしなかったのですが、しばらくすると、これまでクラスの問題児だと思っていた生徒が突然机を叩き、「先生の話を聴こうよ!」と叫んでクラスを静めたのだとか。
この時、生徒がこれまで真剣に授業を受けてくれなかったのは、自分の真剣さが足りなかっただけだったんだと気付かされたと言います。

人の心に火を付けられる先生になりたい。
そのためにはもっともっと自分を磨かなければならない、強くならなければならない。

どうすればいいかと考えた時、身近にいる「人の心に火を付けられる人」である渡部さんを思い出し、弟子入りを頼んだそうです。

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大変だけど成長できる――飛び込み営業

“パンの季”に入ってからは、まずいきなり飛び込み営業を担当することになった小林さん。
同じ「伝える」仕事でも、教員と自営業では危機感が違うことを実感したと言います。

「先生は、言い方は悪いですが授業の内容が相当ひどくない限り、カリキュラムに沿ってさえいればとりあえずお給料がもらえます。生徒に、自分の伝えたいことが伝わっていなくてもです。自営業の場合は、伝えたいことが相手に伝わらないと結果に繋がらず、最悪の場合生活できません。その分大変ですけど、自営業の方が、自分自身が成長できると思いました」

突然全く知らない人がものを売りに来る飛び込み営業。

最初は不信感を抱かれがちですが、自分さえ堂々としてリラックスしていれば受け入れてくれる人は意外と多いそうです。勿論沢山断られますが、その分沢山の人に話しかけます。

時にはお客さんとの交流の中で、その方の人生の深い話をされ、感動することもあるのだとか。

実践を積み重ね、徐々に訪問販売のコツを学んでいったようです。
天候に関係なく、時には嵐や雪の中、営業に出る日々。
大雪の中、11時間パンの箱を抱えて歩くこともあったそうです。

しかし大変な分だけ感慨も大きく、飛び込みで訪問したにもかかわらず、温かく接してくれる人やパンを買ってくれる人には幾度となく心を動かされたと言います。

「努力するのって楽しい!」――ふさぎ込んだ思春期時代、先生を目指す原点

はつらつとした雰囲気の小林さんですが、思春期時代から大学生半ばほどまでは引っ込み思案で人と話すのが苦手だったそう。

「幼少期から小学生の頃までは活発な性格だったと思うんですけど、何をやるにも全力だったんですよ。それが “目立ちたがり”“なんでも一番になりたいの?”って周りの反感を買ってしまったらしく、だんだんといじめのような感じになって、それから中学1年生くらいまではふさぎ込んでいました」

しかし、転機はやがて訪れました。

中学生時代のある日、数学の授業で二次関数のグラフの作図を皆の前で褒められた小林さん。

グラフはその作業が楽しいという理由で細かく作図していただけでしたが、きれいだと褒められたことをきっかけに数学を勉強するようになり、30点だったテストの点数を90点まで上げることができました。結果が出たことで努力することが楽しいと思えるようになり、更に色々なことに興味を持ちました。この経験が先生を目指す原点だったと語ります。

「自信はなくていい」――居酒屋での修行の学び

実はそんな小林さんですが一度“パンの季”を離れています。あまりの社会経験の無さから自信が無く、一度外でアルバイトをしてきてみたらどうかと勧められたからです。
朝礼や接客指導がしっかりとしており、起業の支援等もしていることで有名な居酒屋で働いたそうです。

ここでの経験により、自分よりもすごいのに自信の無い人が沢山いること、その人達が頑張って自信を身に付けようとしていること知りました。

経験が無いなら自信が無くて当たり前。経験無しの自信は過信でしかなく、謙虚さや向上心を大事にしながら本物の自信を作っていけばいいのだとこの時学びました」

「今ならできる」そう思える成長を遂げた小林さんは再び“パンの季”に戻ることにしました。
無事修行を終えパンの季に戻ってきた小林さんを、オーナーの渡部さんは「おかえり」と迎えてくれたと言います。

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パン屋の枠にとらわれない

今ではすっかり“パンの季”の一員として親しまれている小林さん。
“パンの季”ではパンを食べてもらうだけではなく、もっと人々に健康になってほしいとの願いがあります。

体に良いパンでみんなに健康になってほしいという思いの延長で、パンだけじゃなく、お米や化粧品なども扱い始めました。全てオーガニックの最高級品です」

“パンの季”に勤めるにあたり、小林さんは新たに添加物の勉強を始めたそうです。
最近では食品以外の添加物質についても勉強していると言います。

そんな小林さん個人としては、今後美術教師の世界へ戻ることはあるのでしょうか。

「絵を教えることや自分のやりたいこととパン屋は両立できると知ったので、今はパン屋を軸に働き続けるつもりです。ただ、今も時々絵のお仕事をもらったり、セミナーを開いたり色々なことをしています。パン屋という枠にとらわれず、できることで社会貢献していきたいです」

本気になって展開していきたいと思える仕事に出会った小林さん。
小林さんと“パンの季”の今後の歩みに注目です。

:Blanchechou編集部

Information

手作りパン工房 パンの季

〒221-0005 神奈川県横浜市神奈川区松見町1-43-4
Tel:090-2544-2097
web:http://www.pannoki.jp/

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