目指すは頼れる職人の“オヤジ”!? ハマの洋服お直し職人

“オヤジ”というからには、初の男性? いいえ、女性の職人さんです。
今回ご紹介するのは洋服のお直しを20年続けてきたお直し職人、鵜飼睦子さん。
横浜に洋服お直しアトリエ&教室の『チカラ・ボタン』を運営し、一般の人向けのお直しと裁縫やお直しの教室を主軸に行っています。また定期的にカルチャーセンターなどで講師活動を行ったり、企業・取引先からの仕事や制作を依頼されたりすることも。お直しの第一人者として、本の監修・出版も経験しました。

“チカラボタン”とは、コートや上着のボタンの裏の小さなボタンです。 表側のボタンをしっかりと支え、生地の傷みを防いでいます。

“チカラボタン”とは、コートや上着のボタンの裏の小さなボタンです。
表側のボタンをしっかりと支え、生地の傷みを防いでいます。

思い出のお洋服を長く大事にできるように――洋服のお直し・リメイクのお仕事

洋服のお直しと聞いても、あまりピンと来ない方も多いかもしれません。
職人さんにもよりますが、一般的には丈詰め・サイズ調整やファスナー・破れ・すり切れなどの修理などを主に行います。ほんの少し手を加えるだけで着心地の快適感が変わり、それまでなかなか着づらかったお洋服もまた着られるようになります。
そのほか、鵜飼さんは少し複雑なリメイクなども引き受けています。

「昔買ったお洋服、思い入れはあるけど、流行が終わって今は着られない」
「譲り受けた形見のお洋服を自分も着たい」

洋服の数だけある持ち主の想い。お直しの仕事は技術にばかりつい目が行きがちですが、お客様の希望を叶えたい、洋服への気持ちを第一にした仕事がしたい、そんな思いで経営していると言います。

幼いころからお裁縫や編み物好きだった鵜飼さんですが、お直しの仕事を始めたのは最初の就職から10年以上経った後。ある人生の重大な出来事がきっかけでした。

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人生の3つの分岐点--異業種に1からチャレンジ

鵜飼さんは和裁の学校を卒業後、大手生活雑貨店で仕入れ販売員として働いていました。当初の仕事も忙しいものの楽しく取り組んでいたそうですが、10年目にして体調を崩してしまい、入院・手術を経験しました。それまでの仕事を続けたい気持ちはありましたが、体力的にも5年10年と長く続けられるとは思えなかったため、次の生き方を探そうと決意します。

「そのときに初めて洋服のお直しの仕事があると知ったんですよ。昔から好きだし学校でも勉強したのでできれば洋裁・和裁の仕事をしたかったんですけど、その当時すでに30代半ばで、そんな年から洋裁のお弟子さんから始めようとしても厳しいと感じたんです。でもこれなら私もできるかもしれないと思ってお直し屋さんに転職して、1から働いて勉強しました」

それまでの安定した大きい会社で働き続けるか、似たような別の職に就くか、全くの新しい仕事に挑戦するか…。その3つの選択肢からあえて3つ目を選んだのは、幼少期からの憧れだったといいます。

「ゆくゆくは針と糸を持って人の役に立てるような仕事がしたいと小さい頃から思っていました。きっとそういう仕事は技術を身に付けてしまえば自分が続けられる限り一生できる仕事なんじゃないかなというのもありました」

教室に使用する作業台

教室に使用する作業台

また、大企業での勤務を通し、自分がいなくても誰か代わりの人が絶対にいるということを実感した鵜飼さん。次第に自分にしかできない仕事がしたいと思うようになったそうです。
物が目の前を通り過ぎるだけの仕事ではなく、お客様を喜ばせるためにもっと自分の手で関わりたい…。例えば何かオーダーを頼まれて加工してお渡しできるなど、まさに洋服のお直しのような仕事を理想としていたと話します。
その思いはお直しの仕事を続ける中でも膨らみ、もっとお客様の気持ちに沿った仕事をするべく、10年間ほど様々な店舗で経験を積んだのち独立しました。

「お直しの仕事もチェーン展開のお店だとどうしても自分の手を離れてしまうんですよ。手のかかる作業は本社や工場で一括して行うので、お客様の望むようにするための細かい指示が伝えられないんです。仕方がないんですけど、お客様の反応も“こんなもんか”みたいな感じで、それが本当に嫌で独立しました。なので今お客様が心から喜んでくださるのが本当に嬉しくて、モチベーションにもなっていますね」

目指すは頼れる職人の“オヤジ”!? 今後の目標

現在はリメイクの良さを伝えようと、ワークショップ開催に熱を入れる鵜飼さん。
中でも以前開催したセーターやマフラーなどをルームシューズにリメイクするワークショップは人気で、何個も作りに来た方もいたのだとか。

「着なくなったお洋服をリメイクしてまた楽しむことができることを一般の人たちにもわかってもらいたいので、こういうことは力を入れてやっていきたいと思います。断捨離ブームとかで昔のものを処分する人も多いと思うんですけど、処分する前にちょっと考えていただいて、リメイクで楽しんでからでも遅くはないんじゃないかなと思います」

本を出版した関係で、書店でのワークショップの誘いももらっているとのこと。
今後は年間の長期計画を立て、定期的に催していきたいと語りました。

鵜飼さん監修の本

鵜飼さん監修の本

「でも自分が一番目指しているのはお直し屋のオヤジなんです(笑)。今は世の中女性起業家ブームでかっこいいお仕事をされている方がたくさんいて、一時あこがれたこともあるんですけど、これは私の目指しているところとは違うなと思いました。私は遠くのお客様ももちろん大事なんですけど、特にご近所の方から急に依頼されても“しょうがねえな、じゃあやるから持ってきなよ”と答えるような、そんな感じのオヤジを目指しています。最近それが一番やりたいんだなと気づきました。お客様のわがままにはできるだけ応えていきたいなと思います」

外側のかっこよさよりも、どんと構えて身近な人の役に立ちいざという時頼られる存在。
鵜飼さんの目指すのはそんなチカラボタンのような人物なのかもしれません。

取材・文:Blanchechou編集部

チカラ・ボタン

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