「子育てひろば」は、幼い子どもを抱える保護者がつどい、交流する場として近年急速に増えている子育て支援施設です。「屋根のある公園」のようなイメージですが、一定の養成教育を受けた支援スタッフがいて、話し相手になったり情報提供をしたり、ちょっとした親子イベントや講座を企画したりしています。
私は週1回、そんな子育てひろばの中をうろうろして、「ちょっといいですか?」と声がかかるとその場に座って相談を受ける「なんでも相談」というのをやっています。
離乳食だったり寝かしつけだったり、いろんな相談を受けますが、先日「ちょっとトイレに行きたいんで、いいですか?」と男の子の見守りを頼まれました。
2歳前くらいでしょうか・・・大型遊具のすべり台の上に立ったまま真剣な表情で動きません。どうやらそのまま駆け下りたいのだけれど決心がつかなくて、「行く」か「行かない」か、葛藤しているようでした。
ママがいたら「ダメ! 座ってすべるのよ。座って!」と言われてしまうので、今がチャンス・・・でも、ちょっと怖い・・・ だいぶ迷って一歩踏み出しそうになっては戻り・・・結局座って、後ろ向きに寝そべった形で滑り降りました。
(そっか~ それもアリだよ!)
反対側の階段では、もう少し小さい子が両手でしっかり手すりをつかんで立ったまま・・・こちらもその姿勢で階段を降りたいけれど一歩が出ず、お尻をつけば降りられるのだけれどそれはイヤみたいで・・・躊躇したあげくクルリと向きを変え、斜面の方を滑り降りました。
(オッケー、オッケー! いつかできるよ)
私はにっこり笑って、心の中でそう言っていました。
だから、「ダメ!」って言わなくてもいいのです。
子どもはちゃんと自分の能力がわかっていて、できない間はしないから。
もしまだできないことをやって転んでしまったとしても、それも経験。自分で判断して危険を回避する力をつけるほうが、転ぶ前に制止するよりずっと将来の安全につながります。
万が一の時に手を出せる場所に居ることは大人の責任ですが、手も声も出さないでただ「見守る」ことで「きっといつかできるよ」という信頼のメッセージが伝わるのですし、自分で意を決っしてチャレンジしてこそ「自信」という宝物を手に入れることができるのです。
「一日中ダメ、ダメ言ってる自分がイヤになる。どうしたらもっとうまく言うことを聞かせられるんですか?」というご相談もとてもよく伺いますが、今年はちょっと発想を変えて、「危ないこと」をむやみにやめさせるのでなく、
「どこまで黙って見ていられるか」
に、チャレンジしてみませんか?
(逆に、躊躇しているわが子が歯がゆくて「ビビりなんです~」と嘆いたり、「ほら、できるよ、がんばって」と励ましたり、手伝ってしまったりする親御さんの姿もよく見かけます。そのあたりの話は、またいずれ)