地元で、ママ友の相談をよりよく聴くための勉強会をしています。そこで出た話をご紹介したいと思います(プライバシー保護のため一部編集し、創作を含みます)。
5歳の誕生日を迎えたケンくん(仮名)に、パパが「今日は一日なんでも好きなことをしていいよ」と言ったそうです。ケンくんの答えは・・・
「じゃあ今日一日、なにも食べない」
別に修行や断食に興味があったわけではありません。ただ「もっと食べて!」「ちゃんと食べて!」という親の願いを引き受けることに疲れ、「一日でいいから解放されたい」と思ったようです。
お母さんにも、そうならざるを得ない事情がありました。
ケンくんは元気で活発な男の子ですが、小柄でやせ形です。体重は、母子手帳のグラフの下の線の少し下あたりをウロウロする状態で、お姑さんに「男の子なのに、将来が心配」とか言われるし、熱を出したら「食べないから体力がないのね」と姉に言われたのもショック・・・
体格がよく食欲旺盛な姉の子を見るたび、自分の子育てが失敗に思え、罪悪感とコンプレックスの中で「なんとかして、もっと食べさせなければ」「どうしたらもっと食べてくれるの?」と一生懸命工夫をこらし、努力を重ねてきたのです。
幼稚園のお弁当も、毎日暗いうちから起きて「栄養があって彩りよく、食欲をそそるメニュー」を考えて作りました。
そんなママの愛を、ケンくんも一生懸命受け入れようとしてきたのでしょう。でも、「食欲」は案外からだより心と強く結びついていて(「欲」ですから、当然といえば当然なのですけれど)、プレッシャーがかかるとのどが詰まって、「食べなければ」と思えば思うほど食べられなかったりするわけで・・・
何万年の人類の歴史は、飢えとの戦いでした。私たちは何日も食べ物が得られなかったり、手に入る量が少なかったりしても、たくましく生き延びる力を備えているからこそ厳しい環境でも子孫を残し、今日まで命をつないできたのです。
ママも一日、「ちゃんと食べさせなければ」というプレッシャーから解放されてみると、子どもの生きる力を信じる力が湧いてくるかもしれません。