イヤイヤ期のしつけを考える その3 ~時間になったら〇〇する~ 永瀬春美のコラム 第8回

2017.5.18
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ご飯の支度ができたら、テレビを消してテーブルにつく
出かけると言ったら遊びをやめて素直に出かけ、帰ると言ったら帰る
お風呂の時間になったらおもちゃを片づけ、さっさとお風呂に入る
寝る時間になったら、つべこべ言わずに寝る・・・

そうできたらいいのにね

言っても言っても聞かないから、イライラして、
最後には怒鳴ってしまう
そして・・・後悔する

イライラの中身を、じっくり感じてみてください。
どんな気持ちが詰まっているのかな・・・

◇「ちゃんとできる親」になれないくやしさ
健診で指導されたりネットで読んだりした「よい育児」をしなければと思うのに、子どもが応じないから私の努力はいつも報われない・・・ 

◇無視される怒り
言葉はわかるはずなのに、どうして聞かないの? バカにしてる? どうせ私はダメ親よ・・・

◇「ちゃんと育たなかったらどうしよう」という不安
健康を害したり、成長発達が遅れたりしたら、みんな私の責任・・・

◇「失敗」する恐怖
ちゃんとしつけないと、将来友達とうまくいかなかったり、事件を起こしたりするかもしれない・・・

いろんな気持ちが押し寄せて、カーッとするのも
ちゃんとやらなければと一生懸命だからこそ、不安が不安を呼んでパニックになるのも
とても自然なことです。
どうぞ自分を責めないで、自分にやさしい言葉をかけてください。
「がんばりたいのに、うまくいかないことばかりで、つらいね」

「もっと遊びたいけど、時間だから終わりにする」といった「欲求をおさえる脳(前頭前野)」が働き始めるのは3歳過ぎと、前のコラムに書きました。
それ以前の子は、自分の欲求のままに行動するので、「~したい」という気持ちを邪魔されると怒ります。
親に逆らっているのではなく、脳の機能として当然なことなのですから、「言うことを聞かない悪い子」として叱るのは筋違いです。

「時間と言われても、やめられないよね」と、やめられない気持ちを認めてあげてから、
「でも、もう帰らなくちゃ」と抵抗されても抱き上げ、泣いても帰る時間を守ってください。
「悪いね、気持ちはわかるけど無理なの。協力して」 という気持ちでいれば、自分を責めてつらくなることを避けられます。

では、3歳を過ぎたら「言うことを聞かせるしつけ」ができるかというと、これがまたやっかいで、なかなかうまくいきません。
「がまんする脳」の働きは3歳を過ぎるころから働きはじめ、たくさんの葛藤を経験しながら少しずつ力をつけていきます。

大人でも、やりたいことに夢中になって「寝食を忘れる」ことがあります。
私は今朝、テレビで取り上げていた話題に興味をひかれて、電車の時間が気にかかりながらつい最後まで聞いてしまって、遅刻寸前でした。
推理小説を読んでいて途中で止まらなくなり、夕食の準備が間に合わなくてピザを取ったこともあります。

やめられない、けどやめなくちゃ、けどもうちょっとだけ、もうダメ、でもやりたい・・・
そんな、自分の心の中で展開されるバトルは一生続くのです。
「ギリギリの線でなんとかやりくりする術(すべ)」を身につければ、社会で生きていけます。

親子のバトルは疲れます。
子どもの心の中のバトルに目を向けてみましょう。
成長したい意欲に満ちあふれ、まだ経験が少ない子どもが、そうした心の中のバトルをうまくコントロールできないのはしごく当然のことです。
よちよち歩きしていた子がいつの間にか上手に歩くようになったように、子どもの気持ちを大切に受け止めてあげていれば「このままジコチューな人になってしまう」ことはありません。

「いずれ少しずつ上手になる」と信じて、待つ気持ちになれるとよいですね!

コラム執筆者

永瀬春美

大学教員(家族看護学)、専門学校専任講師(小児保健・育児相談など)、同校スクールカウンセラー、保育園看護師などを経て現在NPO法人 子育てひろば ほわほわ 顧問。同法人が運営する子育てひろば内でご相談を受けるほか、個別の面接相談「子育て相談室いっぽ、いっぽ」を主宰。
保護者向けの各種講座、支援者の研修や養成講習などの講師を務める。

Web : http://kosodate-soudan.net

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