「自己肯定感」について思うこと -あべのコラム 第5回

2017.1.29
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数年前くらいから「いまの子どもたちには『自己肯定感』が必要だ」というような声をよく耳にするようになりました。それに伴い、「子どもに自己肯定感を与えるためのセミナー」があったり「子どもが自己肯定感を得られる言葉」が各所で紹介されていたり、ともかく「子どもに自己肯定感を!」というテーマは、現代の保護者たちにとって常識になりつつあるようです。

そのようなテーマを持つこと自体は良いことだと思います。ただ、「もっと自己肯定感が必要」なのは、本当に子どもに限った話なのでしょうか。

ボクは「もっと自己肯定感が必要」なのが子どもの話だという感覚はあまりありません。言うならば、今の日本は“一億総「自己肯定感が足りていない」社会”だと思っています。

「子どもにもっと自己肯定感を」と取り組むのは良いことです。しかし保護者のみなさんには、「自分の『自己肯定感』はどうなのだろう」とも、ちょっと考えてみて欲しいなと思います。

自己肯定感とは、自分の足りないところや欠点すら肯定(自己評価)できる感覚です。自己肯定感が「低い」と、例えば「足りないところ」ばかりが気になって「自分はダメだ」「自分は役に立たない」などと感じてしまう状態になります。逆に、「自信も経験も足りないけど、やるだけやってみよう」という状態は、自己肯定感が「高い」わけです。

ややこしい話をしましょうか。

「ウチの子には自己肯定感が足りない」と思っても、あまりそこを気にせず、むしろその足りなさも評価してあげられる状態は、保護者として自己肯定感が高いと言えます。

保護者の自己肯定感が高ければ、子どもへの評価が高くなるため、その子どもは当然のことながら自己肯定感がどんどん養われます。

つまり、仮に子どもの自己肯定感が低くても、保護者が自己肯定感を高く持っていられれば、特に何もせずとも勝手に子どもの自己肯定感は高まっていくはずなのです。

逆に、「子どもに自己肯定感を!」という取り組みに熱心になりすぎて、「もっともっと」と「足りないところ」ばかりを見てしまわないように気をつけましょう。そうなると、自己肯定感を高めようとする取り組みが、かえって親子ともに自己肯定感を高めづらくなってしまいます。

「ウチの子には自己肯定感が足りない」と思ったら、まずは子どもではなく、自分自身の自己肯定感を高めること=自分を肯定すること、から始めてみて欲しいなと思っています。

「自己肯定感」について、もっと書きたいことはあるのですが、文字数の関係で今回はこの辺で。またの機会があれば、そのときに書かせて頂きます。

コラム執筆者

阿部 伸一(株式会社REO 代表取締役/特定非営利活動法人いばしょづくり 代表理事)

1973年生。神奈川県横浜市在住。心理カウンセラー。
20代後半より、不登校生・保護者へのカウンセリングや学習・進路指導を始める。
『マニュアルは無い』をポリシーとし、特定の手法を用いずに『環境・行 動・資質』それぞれの状況を把握することで、個々に応じた対応や具体的なアドバイスに務めるという独特のスタンス。個別指導塾を運営していることもあり、『不登校からの学校選びと受験対策』『私立一貫校生の不登校対応』は専門分野。
2003年に学習サービス事業の株式会社REOにて「不登校サポートコース」を発足。また、2010年に不登校生、不登校経験者、保護者のサポー トを行う「特定非営利活動法人いばしょづくり」の活動開始。
近著「『不登校』は天才の卵」(宝島社)
web:株式会社REO特定非営利活動法人いばしょづくり
Blog:不登校でもイイじゃん ~あべのブログ~

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