レイ・クロック成功のヒミツを描いた映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』は起業家必見!


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映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

原題:THE FOUNDER
提供:KADOKAWA テレビ東京 BSジャパン テレビ大阪
配給:KADOKAWA
監督:ジョン・リー・ハンコック 脚本:ロバート・シーゲル
出演:マイケル・キートン ニック・オファーマン ジョン・キャロル・リンチ
ローラ・ダーン パトリック・ウィルソン B・J・ノヴァク リンダ・カーデリーニ
2016年 アメリカ映画 115分
7月29日(土)角川シネマ有楽町、角川シネマ新宿、渋谷シネパレスほか全国公開

本作はマクドナルドの(自称)創業者(ファウンダー)レイ・クロックと、真の創業者マック&ディック・マクドナルド兄弟との、経営に関する攻防を描いた実話の映画化です。
ハンバーガー店マクドナルドは、1940年5月、スコットランド系アメリカ人のマクドナルド兄弟がカリフォルニア州サンバーナーディーノで開業しました。皿を使わず、包装紙のまま、店の屋外にあるベンチに腰掛けて食べるという画期的なシステムの店舗です。後片付けの面倒がなく、スピーディで均一な味のシステムを確立して、既に行列のできる店となっていました。

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1954年、ユダヤ系アメリカ人のレイ・クロックはミルクシェイク・ミキサの売込みにマクドナルド兄弟の店を訪れ、店の合理的システムと品質管理に驚きます。ほかのハンバーガーショップでは、20分以上待たされ、注文と違う商品が出てきてうんざりしていたのに、この店は僅か30秒でハンバーガーが出てきたではありませんか。スピード、味、品質にこだわったシステム。クロックはマクドナルド兄弟に提案します。「フランチャイズを!」。

しかし兄弟は、「このシステムを維持させるには、我々の眼が行き届く範囲内でなければ困る」とクロックの提案を受け入れません。「契約書に明記すれば問題解決です。フランチャイズは私にお任せを」。店を後にしたクロック。信頼できる人物を見つけるとフランチャイズを持ち掛け、次々と店舗を増やしてゆきます。

クロックのマーケティング戦略は子供向けの店舗にすることで家族連れの客層を増やすこと。その戦略は成功し、フランチャイズのオーナーも満足です。ところが、売上増なのに採算は悪化。その原因はシェイクにありました。シェイクの材料であるアイスクリームを貯蔵する冷凍庫の電力費が原因です。

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すると、フランチャイズ店オーナーの奥さんが、「粉末のシェイクを使えばアイスクリームは要らなくなるわよ」と粉末をグラスに入れ、クロックに差し出します。試飲してみると「うん、おいしい」。早速マクドナルド兄弟に粉末シェイクを提案。品質第一ですから当然「そんなまがい物、使用を認めん!」と却下。

クロックはフランチャイズの採算を回復させなければなりませんから、兄弟の言うことを無視するようになってきます。クロックは「粉末だとコスパがいい」と、フランチャイズ店に粉末を配ってしまいます。「契約なんて破るためにあるのさ」と言い放つクロックに、兄マックは心臓発作で入院。
さらにクロックは別会社を設立して、マクドナルド兄弟の店の土地を買い取り、兄弟に借地料を請求。「これは不動産業だから、フランチャイズの契約に抵触してないよ」。

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兄弟からノウハウを提供され、兄弟を支援するために始めたFCなのに、恩を仇で返すような仕打ち。レイは堕落した金の亡者なのでしょうか、それとも起業家の鑑でしょうか。
マクドナルド兄弟は、クロックの利益第一主義と折り合いをつけなければなりません。
この後も、レイの採算重視の狂気はエスカレート、お人好しのマクドナルド兄弟が掲げる品質第一主義は次第に壊されてゆきます。激化するレイとマクドナルド兄弟の対立。これから先は書かないでおきましょう。

この映画を観る人たちは、レイとマクドナルド兄弟、どちらに共感するでしょうか。本作は、スコットランド系アメリカ人とユダヤ系アメリカ人という属性を明確にしていますが、これで経営体質の違い、顧客満足度重視と採算性重視の対立を浮き彫りにできたのです。レイなくして現在のマックはありません。しかしマクドナルド兄弟の掲げた品質第一主義も活きているのです。

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経営の奥深さ、起業(企業)は人なり(パートナーも従業員も人選が重要)を痛感させる起業家必見のドラマです。
なお、シェイクはアイスクリームと牛乳を使う製造法に戻されていますのでご安心を。

レイ・クロックは名刺に「ファウンダー(創業者)」と入れていました。真の創業者はマクドナルド兄弟ですが、自分がマクドナルドを成長させたというレイの誇りが「創業者」の自己適合宣言をさせたのでしょう。
レイ・クロックは「成功はゴミ箱の中に」(プレジデント社刊)という起業家のバイブルといわれる自伝を残しています。興味のある方は書店またはアマゾンでお求めください。

http://thefounder.jp/

:伊藤 孝

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