パリの最先端ファッション、死者からのメッセージ。『パーソナル・ショッパー』は生と死、二つの世界の道筋を探検する女性映画

©2016 CG Cinema – VORTEX SUTRA – DETAILFILM – SIRENA FILM – ARTE France CINEMA – ARTE Deutschland / WDR

『パーソナル・ショッパー』

5月12日 TOHOシネマズ六本木ヒルズ ほか全国ロードショー
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
原題:PERSONAL SHOPPER
2016年 フランス映画
監督・脚本 オリヴィエ・アサイヤス
主演 クリスティン・スチュワート
©2016 CG Cinema – VORTEX SUTRA – DETAILFILM – SIRENA FILM – ARTE France CINEMA – ARTE Deutschland / WDR

モウリーンの職業はパーソナル・ショッパー。忙しい雇い主に代わり、買い物をする職業です。ファッションや装飾品のセンスと知識がなければ務まらない仕事ですが、モウリーンはこの仕事を、ただのパシリに過ぎないのではないか、というコンプレックスを抱えています。
モウリーンには、自分より恵まれた誰かになりたい、との願望があり、買い付けてきた衣服や装飾品をこっそり身に着けてみるのでした。

©2016 CG Cinema – VORTEX SUTRA – DETAILFILM – SIRENA FILM – ARTE France CINEMA – ARTE Deutschland / WDR

ある日、モウリーンは、「別人になりたいのか」と何者かにSNSで問われます。モウリーンは3か月前に亡くなった双子の兄ルイスからだと思うのですが、メッセージの送り手は正体を明かしてくれません。
「お前のことは知っている。近くでお前を見ている」と繰り返しメッセージを送って来ます。彼女の心中を見抜き、常に行動に寄り添う。それは守護神ではなく、見えないストーカーのようです。
買い付けた品物を雇い主に届けに行くと、部屋で雇い主の女性は変死していました。モウリーンが別人になりたいと願ったからでしょうか。
メッセージを送って来る人物は誰か。雇い主を殺したのは誰か。モウリーンは別人になれるのか。そして、モウリーンが選んだ行動は…。

©2016 CG Cinema – VORTEX SUTRA – DETAILFILM – SIRENA FILM – ARTE France CINEMA – ARTE Deutschland / WDR

実は、モウリーン(クリスティン・スチュワート)は、霊媒師でもあるのです。映画の冒頭、家屋を購入しようとしている客から、「この家は何者かの気配を感じる。誰かが棲みついているのか調べてくれ」と依頼され、モウリーンはその家で一晩過ごし、ラップ現象、エクトプラズムなどを体験します。
そういう能力があるから、SNSで霊界からのメッセージ(と思われる)を受けることが出来たのかもしれません。

『パーソナル・ショッパー』が優れた作品であることは間違いありません。しかし、スピリチュアルな要素を入れた映画は、正当に評価されないことが多いのです。いわゆる知識階層といわれる人間ほど、自分の知識、経験から離れた事象を認めることが出来ず、目で見たことしか信じないからです。
そういう観点からも、オリヴィエ・アサイヤス(監督・脚本)が、あえてそういう要素を入れたのは、勇気のある作り方だと言えます。
本作はカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞していますが、上映後に激しいブーイングにさらされたそうです。予想を裏切るエンディングは、彼らの理解を超越しているからでしょう。スピリチュアルな要素を抜いたつくり方もできたはずですが、それではオシャレな女性映画でしかなく、アサイヤスが表現しようとした、人は誰かに見守られている、というテーマが描き切れないのです。

©2016 CG Cinema – VORTEX SUTRA – DETAILFILM – SIRENA FILM – ARTE France CINEMA – ARTE Deutschland / WDR

世界的名匠であるクリント・イーストウッド監督にもスピリチュアルな作品があります。臨死体験をした女性と霊能者を主人公に、死後の世界を探求した『ヒア・アフター』(10)、主人公が実は死んでおり、幽霊だったという『荒野のストレンジャー』(72)、『ペイルライダー』(85)があり、いずれも高い評価を受けていますが、死後の世界や幽霊を信じない人には荒唐無稽であり、理解できなかったようです。

わが国でもアサイヤスは正当に評価されませんでしたし、多くが未公開です。同じような題材は扱わず、映画作家としてはB級という位置づけをする評論家もいます。前作『アクトレス~女たちの舞台』(14)はカンヌで絶賛されました。その評価をひっくり返すような本作は、評価に満足することなく、自分のつくりたい題材にチャレンジするアサイヤスの意思表明のようです。

『パーソナル・ショッパー』は、霊とのコンタクトを扱っていますが、モウリーンが自分に自信を持って生きていくことを見出すまでのアイデンティティー回復の物語であり、人は誰かに見守られている、ということを描いている作品です。
「私たちは社会の中で、一人で生きているのではないと感じています。(愛していたけど亡くなった人々は)私たちと一緒にいます。現代社会では、そのような考え方を拒否します。今回、この映画の中で二つの世界の間の道筋を探検しよう、何か実験的な挑戦をしてみようと思ったのです」(オリヴィエ・アサイヤス)

オフィシャル・サイト http://personalshopper-movie.com/

Page Top