ケネディ暗殺から4日間、彼女は最愛の夫を伝説に変えた。世紀のファーストレディの物語


© 2016 Jackie Productions Limited

ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命

(配給・キノフィルムズ)
(2017年3月31日 TOHOシネマズシャンテほか公開)
原題:JACKIE
監督=パブロ・ラライン 脚本=ノア・オッペンハイム
撮影=ステファーヌ・フォンテーヌ 衣装デザイン=マデリーン・フォンテーヌ
製作=ダーレン・アロノフスキー 主演=ナタリー・ポートマン

ケネディ暗殺の真相に迫る映画は、『ダラスの熱い日』(73)、『JFK』(91)など数多いが、大統領夫人のジャクリーン・ケネディを主役にした作品は見当たらない。ジャクリーン・ビセットがジャッキーを演じた『愛はエーゲ海に燃ゆ』(78)があるが、これはオナシスとの愛を描いたJFKとは別の作品。

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だが、ようやくジャクリーン・ケネディを主役にした作品がつくられた。しかし、本作はジャクリーン・ケネディの伝記ではない。63年の11月22日のJFKの暗殺から葬儀までの4日間のジャッキーの行動を描いたものだ。
ジョン・F・ケネディを「過去の人」とさせない、歴史に名を残すために、妻として何をすべきか。ジャッキーの心理の変化、葛藤、決意を見事に描き出している。

映画は、ケネディ暗殺から1週間後、記者(ビリー・クラダップ)の単独インタビューにジャッキー(ナタリー・ポートマン)が答える形で始まる。「話したこと以外のことは書かないように」「メモは見せてもらいますよ」。夫を守ろうとする姿が冒頭からうかがえる。
ホワイトハウス入りしたジャッキーのエピソードが興味深い。ホワイトハウスをジャッキーが案内するテレビ番組の再現は当時のフィルムのフッテージかと思うくらいで、よく見るとジャッキーがナタリー・ポートマンだと気づく。壁に飾られた絵画のサイズまで正確に再現したという。

© 2016 Jackie Productions Limited

また、ダラスのパレードで着ていたストロベリーピンクのスーツと帽子も忠実に再現された。なぜここまで細部にこだわるのか。あの日のことを知る人々からは、ジャッキーの服の色まで鮮明に記憶に残っているから疎かにできないのだ。大統領が狙撃され、ジャッキーのスーツに血が付着する。ホワイトハウスに戻っても着替えない。側近が着替えるように行っても、「反ケネディの連中に、彼らのやったことを見せつけるのよ」と答えるジャッキー。
だが、「銃声を聞いた時に私がジョンを庇っていたら…」と悔やむ気持ちにも襲われるのだ。

© 2016 Jackie Productions Limited

そしてジャッキーは、「今やるべきことは、ジョンの葬儀についてだ」。リンカーンの葬儀のときの資料を取り寄せ、「世界中の元首と一緒に、セントマシューズ大聖堂まで棺とともに行進する。人々の記憶に残る美しい葬列にします」と言い出す。しかしジョンの弟ロバート(ピーター・サースガード)をはじめ側近から危険すぎると止められ、それは私の見栄かもしれない、と一時は思いとどまるが、夫を狙撃したオズワルドが殺されたことを知り、ジャッキーの気持ちは固まる。ジョンの国葬は彼女の計画通り執り行われるのだ。

© 2016 Jackie Productions Limited

すべてのショットにジャッキー(ナタリー・ポートマン)が出ている。ジャッキーの役作りは、独特の訛りと言葉選び、ウイスパーボイスの再現だった。「とても控えめで、まつげをパチパチさせて、吐息を交えながら話すの」とポートマン。
そして時折挿入されるニュースフィルムのフッテージ。あるいはその再現。
そして作品に奥行きを与えているのが「キャメロット」だ。JFKはこのミュージカルの唄が大好きだったという。アーサー王は力だけで国を統一することが正義だろうかと悩み、すべての統治者は武器を捨て、わがもとに集えと叫び、円卓が生まれ平和の楽園キャメロットが生まれる。これこそがJFKの、ジャッキーの悲願だったのではないか。

ナタリー・ポートマン主演、映画「ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命」公式サイト Blu-ray & DVD 10月4日(水)発売!

:伊藤 孝

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