UFO探しの旅、映画『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』は新しい映画表現

©Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM] / Go Shibata

『ギ・あいうえおス 他山の石を以って己の玉を磨くべし』

製作:山口情報芸術センター[YCAM]
監督・原案・編集:柴田剛 撮影:高木風太
7月15日(土)より渋谷ユーロスペースにて1週間レイトショー
2016年 モノクロ・パートカラー 86分

柴田剛の作品は類似した作品が存在しないから、観てみるまでは予測不可能だ。しかも『おそいひと』(04)『堀川中立売』(09)の頃より明らかにつくり方が進化している。
『おそいひと』は、電動車椅子とボイスマシーンを操る身体障碍者(実際の障碍者)の犯罪というストーリーだが、その独特の語り口は新鮮というより異端であった。そういう意味では、柴田剛は孤高の映画作家と位置付けても大げさではないだろう。
そしてこの新作である。本作は、ストーリーを語らず、ジャンル映画に属さない映画。映画作家・柴田剛しか描けない、山口情報芸術センター[YCAM]が柴田剛に何の条件も制約もなく、自由につくらせた作品である。

©Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM] / Go Shibata

音楽を奏でるように映画をつくる集団、ギ・あいうえおス。彼らは山口県に車(くじら号2)を走らせる。目的はUFO探し。その先々で様々な人物やパフォーマンス集団と出会う。
UFOは映画の中盤で目撃する。モノクロ映像がカラーになり、光る葉巻型のUFOを捉える。これでUFO探しという目的は達したが、彼らは旅を続ける。
そして、炎舞のパフォーマンス集団「AbRabbi-油火-」や、“ギ”の行く先々に出没する妖精のような「hyslom/ヒスロム」と出会う。

これはドキュメンタリーか。柴田剛の構想通りに編集されたフィクションか。これを柴田剛のドキュメント論と捉えることもできる。ドキュメントも編集という作業でフィクションとなるのだ。ロバート・フラハティの『極北のナヌーク』(22)も待ちポジが見られたが、それでもフィクションではない。では、本作はドキュメンタリーなのか。
冒頭、車から伸びるガンマイク。風や林の中を歩く環境音が暴力的に我々を攻撃してくる。マイクを持ったスタッフが‟ギ”の一員のように画面に収まる。

©Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM] / Go Shibata

『ジョギング渡り鳥』でも録音スタッフが画面に入り込んでいたが、本作はあのようなセットばらし的なものではなく、ドキュメンタリーとフィクションの仲介者のような存在なのだ。
“ギ”がUFOを目撃したように、我々は新しい映画表現を目撃するのだ。映画の可能性を追求した実験的な作品である。
東京では7月15日より公開、大阪では6月24日に特別上映イベント(詳細は下記Webサイト)、山口県では昨年8月公開済みだが、順次全国公開となるだろう。

©Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM] / Go Shibata

最後に、本作を製作した山口情報芸術センター[YCAM]について簡単に紹介したい。
03年に設立したYCAM(ワイカム)は、山口市民会館、中原中也記念館とともに、公益財団法人山口市文化振興財団が運営している。美術館とは異なり、既存の作品を保存するのではなく、作家とゼロから作品を作り上げていく。
YCAMは研究開発活動を基盤に、教育、芸術表現、地域などの分野で多数のプロジェクト、イベントを実施。本作は、2015年にスタートした映画製作プロジェクト「YCAM FILM FACTORY」 の第一回招聘作家の作品である。
過去のアートではなく、今つくられようとしているアートを触れに、いちどYCAMに訪れてみてはいかが(JR湯田温泉駅から車で5分)。

オフィシャル・サイト http://gui.shibatago.com/

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