『チリの闘い』~世界で最も優れた10本の政治映画に選出!労働者、母親が暴利をむさぼる闇市場に対抗!

『チリの闘い』 La batalla chile

チリ・フランス・キューバ 1975~1978年 263分
9月10日よりユーロスペース、10月1日より横浜シネマリンほか公開

©1975、1976、1978 Patricio Guzman

©1975、1976、1978 Patricio Guzman

映画史上屈指の名作、ドキュメンタリーの代表作といわれる『チリの闘い』は、チリで世界初の選挙による社会主義政権誕生と軍事クーデターによる終焉を描いた4時間30分の3部作です。

第1部、第2部では、民衆の自由選挙により誕生したアジェンデ政権が、軍事クーデターにより倒されるまでが描かれています。第1部の終盤では、軍人がカメラに向かって発砲、カメラを廻しながらカメラマンが倒れる、その映像は衝撃的です。

そして第3部「民衆の力」は労働者、農民、母親らが立ち上がり、自分たちの力で食料の配給体制を確立していく姿を描いています。

©1975、1976、1978 Patricio Guzman

©1975、1976、1978 Patricio Guzman

アジェンデ大統領率いる人民連合政権(1970~73年)を米国は脅威と見なし、CIAはトラック協会に資金援助を行い、ストライキを画策します。
物流が止まり、さらに反アジェンデ派の経営者らもストに加わり、そのためチリの経済、社会は混乱に陥ります。食糧の配給が止まり、暴利をむさぼる闇市場が跋扈し、民衆の暮らしを圧迫します。
そこで労働者、農民、子どもを抱える母親らが立ち上がり、無数の地域別グループを組織してゆきます。彼らは協同組合型の体制を構築、食糧を配給し、ストライキ中の工場を占拠・運営し始めるのです。
民衆が構築した社会主義組織体はアジェンデ政権を支援するソ連KGBからの援助もあったようです。チリは冷戦下の米ソ代理戦争の様相を呈してきますが、73年に起きた軍事クーデターによりアジェンデ政権は終焉を迎えます。そして、凄まじい左翼狩りが始まり、反体制派市民の多くが投獄、処刑され、民衆による自主配給体制も崩れ去るのです。

©1975、1976、1978 Patricio Guzman

©1975、1976、1978 Patricio Guzman

本作の監督、パトリシオ・グスマンらスタッフはクーデター勃発の日に捕らえられ、独房に収監されますが、奇跡的にほぼ全員(撮影者のホルヘ・ミューラー・シルバは恋人である女優カルメン・ブエノとともに秘密警察に捕らえられ、拷問の後に行方不明となります。本作は「ホルヘ・ミューラーの思い出に」と献辞が出ます)が出獄、フィルムは密かに国外に持ち出され、フランスで完成させようとしますが資金難で巧くゆきません。しかし、キューバの映画芸術産業庁から必要な設備の提供があり、完成にこぎつけることができたのです。
映画史に燦然と輝く名作を、ようやくわが国でも観ることができるわけですが、命がけで撮影素材を守り、フランスのクリス・マルケルやキューバなど国外からの協力があって完成したことを思うと感慨深いものがあります。

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