~魔都バンコク、タニヤ嬢と日本人オザワの逃避行! 構想10年、撮影4年! アジアで生きる女性を描いた映画製作集団「空族」の最新作~

バンコクナイツ

©Bangkok Nites Partners 2016

製作・配給 空族
2016年 日本=フランス=タイ=ラオス 182分
2月25日 テアトル新宿、横浜ジャック&ベティほかロードショー 全国順次公開
監督・脚本・主演 富田克也  脚本・監督補 相澤虎之助

映画製作集団・空族の映画は、各作品の一部登場人物が共通しているというだけでなく、物語がどんどん発展してゆく面白さがある。「国道20号線」(06)は「サウダーヂ」(11)に繋がり、「サウダーヂ」の出稼ぎブラジル人はヒップホップグループに、タイパブの女性たちやタイ帰りのビンは「バンコクナイツ」へと引き継がれ、そして「チェンライの娘」(12)の川瀬陽太演ずる金城も「バンコクナイツ」に重要な役で登場する。イサーン語の字幕は甲州弁というのも前作との繋がりを感じさせる。

3時間2分の「バンコクナイツ」は凄まじい情報量に圧倒されるが、観客にとって親切なつくり方ではない。主な舞台となるバンコクの歓楽街タニヤ通りについての説明がない。観光映画ではないにしても、この街の娼婦やタクシー運転手はイサーン出身者が多いことなどの情報も語られない。そういう情報は富田、相澤両氏のティーチインで知ったことだ。
そして舞台はイサーン、ラオスへと移るが、巨大なクレーター、移動中にイサーンの森を疾走する集団(共産ゲリラ)や謎の詩人(幽霊)についても情報は与えられない。
面白いのは、終盤でオザワ(富田克也)が銃を買うシーンに登場するアメリカ人は、ホンモノの元グリーンベレーを起用するというこだわりを見せる(アベル・フェラーラ監督の紹介とのこと)。

©Bangkok Nites Partners 2016

ここで、これだけは知っておくべき「バンコクナイツ」の基礎知識。
「バンコク」=タイの首都バンコクにはゴーゴーバー、カラオケ、マッサージパーラー、バービア、置屋など様々なスタイルの娼婦が存在する。その原因は、1969年、タイ政府とアメリカ軍の間で締結されたR&R条約(レスト・&・レクリエーション条約)にある。ベトナム戦争で闘う兵士のために休暇と保養の施設をタイが提供するという条約。
「タニヤ通り」=バンコクのビジネス街、シーロムにある日本人専門の歓楽街。70年代、日本企業の進出とともに形成された。200メートルの通りに約1万人の娼婦が働いているといわれる。この映画の撮影は、タニヤ嬢の皆さんが街の総元締めに撮影許可の橋渡しをしてくれたことによる。
「イサーン」=タイ東北地方の総称。イサーンの人口はタイ総人口の3分の1を占めるが、最も貧困な地区といわれ、娼婦やタクシー運転手などバンコクの労働力の供給元となっている。
「ラオス」=ラオス人民民主共和国は北に中国、西にミャンマー、東にベトナム、南にカンボジア、そしてタイと国境を接する。ベトナム戦争で最も激しい爆撃を受けた国である。米軍は1964年から10年間で58万回に及ぶ爆撃をラオス領内で行った。爆弾の総量は200万トン以上で、第2次大戦中にナチスドイツ領内に落とされた爆弾の2倍に相当する。中立国ラオスが爆撃を受けたのは、ホーチミン・ルートと呼ばれる南のベトコンに支援物資を送る補給路の大半がラオス領内を通っていたためである。
ベトナムの国境に近いシェンクアンのあるジャール平原は、最も激しい爆撃を受けたことによりできたクレーターが数多く残っている(映画の中でも見られる)。また、ラオス全土で数千万単位にのぼるといわれるクラスター爆弾の不発弾が集中的に残っている危険な地域でもある。
※参考資料=空族+スタジオ石+YCAM バンコクナイツ展「潜行一千里」ハンドアウト

「バンコクナイツ」は娼婦・楽園・植民地をテーマにしているが、セックスシーンも裸も出てこない。逞しいタニヤ通りの娼婦たち。日本人以外は入店を許されない歓楽街。日本語の看板。かたことの日本語を話す娼婦たちは、日本人を相手にしながら、陰では日本人ビジネスマンをバカにし、舌を出す。

©Bangkok Nites Partners 2016

主人公の娼婦ラックと客であるオザワの関係は対等だ。時にはラックに殴られるオザワは日本とタイの関係を象徴しているようにも見える。
空族の次回作で、アジアにおける日本(日本人)はどう発展していくのだろうか。

オフィシャル・サイト http://www.bangkok-nites.asia/

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