~巨匠アンジェイ・ワイダが、社会主義政権に抹殺された芸術家を描いた入魂の遺作~

Ⓒ 2016 Akson Studio Sp. z o.o, Telewizja Polska S.A, EC 1 – Łódz Miasto Kultury, Narodowy Instytut Audiowizualny, Festiwal Filmowy Camerimage- Fundacja Tumult All Rights Reserved.

『残像』

2017年6月10日 岩波ホールほかロードショー
原題:powidoki 英題:afterimage
配給:アルバトロスフィルム 2016年 ポーランド映画
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2016年10月9日、ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督が肺不全により永眠、90歳でした。本作は亡くなる年に完成したもので、まさしく生涯現役の映画作家でした。
アンジェイ・ワイダの遺作は、ポーランドの画家で大学教授だったヴワディスワフ・ストゥシェミンスキが社会主義と闘った4年間を描いています。
第二次大戦後のポーランド、スターリンによる全体主義に抵抗したため、職を奪われ、彼の作品が破壊され、食糧を購入することもできず、衰弱と肺病で亡くなるまでのストゥシェミンスキを見詰める、ワイダの静かな怒りがほとばしるような作品です。

ストゥシェミンスキを描くことはポーランドの社会主義化がいかに芸術表現を弾圧したか。個人は、芸術家として生きるか、全体主義に呑みこまれるか、選択を迫られた時代を炙り出し、現在の私たちに突き付けているのです。

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芸術を全体主義の枠に押し込めようと、理不尽な理屈を押し付ける全体主義。それに反論するストゥシェミンスキを、権力は大学から追放します。それでも師であるストゥシェミンスキを慕い、支援する学生たち。そして、父を心配する娘。しかし共産党上層部の迫害は支援者にもおよび、ストゥシェミンスキを孤独に追いやります。職を得ても当局に察知され馘首、食糧の配給切符が貰えず、国の認可がないため画材も買えません、困窮の果て、病魔に侵され、非業の死を遂げるストゥシェミンスキをワイダは冷徹に描いています。

芸術を全体主義の中にはめ込み、芸術は政治の理念を反映するものでなければならないとする文化省の強制に妥協しなかったストゥシェミンスキ。彼の作品、そして理論も、ポーランド社会主義政府は葬ってしまったのです。
そのため、わが国ではあまり知られていない画家、ストゥシェミンスキの静かな闘いを描きながら、イデオロギーと芸術について語っているワイダの遺言のような作品です。
ワイダ自身もポーランド映画協会会長の座を追われるなど、国情に翻弄されてきました。ワイダの生涯を振り返ると、ストゥシェミンスキの生涯と重なることに気づきます。

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ワイダは画家ストゥシェミンスキと同じく、かつては画家を志していました。18歳の時に国立博物館で開かれた「日本美術展」で、歌麿、北斎などの浮世絵に感銘、芸術家を志し、美大に進学します。その後、映画大に進学し、1954年に『世代』を発表、『地下水道』(56)、『灰とダイヤモンド』(58)は抵抗三部作として映画史に刻まれています。

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1987年、ワイダは稲盛財団(京セラ名誉会長・稲森和夫氏により設立)の第3回京都賞思想芸術部門を受賞しています。ワイダはその賞金を基に、クラクフ市に日本美術芸術センターを設立、日本の伝統文化に関心を持つ大学生を京都に派遣するなど、日本・ポーランドの友好にも貢献しています。
ワイダは、若き日に日本の浮世絵から受けた感銘を忘れていなかったのです。
『残像』は、画家を志していた若きワイダの原点帰りを思わせる、力強い作品です。

オフィシャル・サイト
http://zanzou-movie.com/



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