アードマンの「アーリーマン」は家族揃って大満足 ! ~ 「アーリーマン ~ダグと仲間のキックオフ ! ~」


© 2017 Studiocanal S.A.S. and the British Film Institute. All Rights Reserved.

~アードマンの「アーリーマン」は家族揃って大満足 ! ~
「アーリーマン ~ダグと仲間のキックオフ ! ~」
原題:EARLY MAN 配給:キノフィルムズ/木下グループ
2018年 イギリス=フランス 字幕版及び吹替え版上映
2018年7月6日(金)TOHOシネマズ上野ほか全国ロードショー
監督:ニック・パーク 脚本:マーク・バートン ジェームズ・ヒギンソン

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「ウォレスとグルミット」、「ひつじのショーン」でお馴染みのアードマン・スタジオの新作です。アードマンはイギリスのクレイアニメーションスタジオです。クレイアニメーションとは、粘土人形を少しずつ(数分の1秒間分)動かしてコマ撮りする手法のアニメーションです。「クレヨンしんちゃん」劇場版のオープニングタイトルがクレイアニメーションです。「きかんしゃトーマス」もクレイアニメーションでしたが、08年の12シリーズからフルCGになって、クレイアニメーション独特の表現が失われたため、熱烈なトーマスファンだった孫がまったく観なくなりました。幼児の感性は敏感ですね。粘土人形の大胆な動きは子どもの興味を捉えているのでしょう。

クレイアニメーションの原点はレイ・ハリーハウゼンが開発したストップモーション・アニメーションです。「シンドバッド7回目の航海」(58)で複数のクリーチャーが実写の人物と闘うシーンに使われ、「アルゴ探検隊の大冒険」(63)ではさらに進化した動きを見せています。これらの作品は部分的にクレイアニメーションを使っていますが、アードマン作品は90分全篇がクレイアニメーションなのです。

本作は、脚本づくりに3年、撮影に1年半、150名のスタッフと273体のパペットが使われた労作で、楽な道は選ばず、敢えて難しい設定で作っています。スタジアムで盛り上がる大群衆。原始人チームと文明人チームのサッカーのクライマックスは粘土人形相手に思わず応援していました。

そして練り上げられたギャグと予想外の展開に大人も子供も間違いなく大喜びのファミリー映画です。

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物語

まだマンモスがいた頃のお話。原始部族のダグと仲間たちは森の中の小さな谷間で暮らしていました。ある日、森の向こうから青銅器部族が谷で採れる青銅を奪うため、軍隊を引き連れて侵攻してきました。故郷を追われた原始部族は荒れ地に避難、ダグは軍隊に捕らえられてしまいます。巧みに逃げ出したダグは、青銅器部族の街を彷徨い、サッカー少女グーナと仲良しになります。青銅器部族はサッカーが大好き。そこでダグは、地元最強チーム、レアルブロンジオに挑戦、彼らに勝つことで故郷を取り戻そうとします。原始部族にとってサッカーは未知のスポーツでしたが、グーナの指導を得て特訓。いよいよ試合の日を迎えます。果たして原始部族は文明人に勝利し、故郷を取り戻せるでしょうか。

アードマン作品は誰もが楽しめますが、考えると結構奥が深いことに気づきます。前作「ひつじのショーン~バック・トゥ・ザ・ホーム~」(15)は、飼い主から逃げ出したひつじたちが、町に出て自由を満喫しますが、食べ物を得るために飼い主のもとへ戻ってゆきます。ニーチェが「ツァラトゥストラ」で説く三様の変化に逆行する結末です。せっかく自由を奪取した獅子と成ったのに食べ物を得るために自由を放棄するという結末は人間社会にも当てはまることに気づかされます。

本作では、民族差別、サッカーは男だけのスポーツというイランや我が国の相撲を思わせる男尊女卑、国民から搾取する権力者などがしっかりと描かれているのです。

この夏、原始人がフィールドをアツくする! アカデミー賞®4度受賞!『ひつじのショーン』チーム史上最高の傑作が日本上陸!

:伊藤 孝

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